公共工事を受注したい建設業者向けに、建設業許可、決算変更届、経営事項審査(経審)、経営状況分析、入札参加資格申請、電子入札までの流れをわかりやすく解説します。
公共工事を受注するには何が必要か
公共工事を受注したい場合、まず全体の流れを理解することが大切です。
公共工事は、建設業許可を取っただけですぐに入札へ参加できるものではありません。
民間工事であれば、建設業許可を取得することで500万円以上の工事を請け負える体制を整えることができます。
しかし、公共工事を元請として受注するには、さらに経営事項審査、いわゆる経審を受け、各発注機関の入札参加資格申請を行う必要があります。
大まかな流れは次のとおりです。
- 建設業許可を取得する
- 毎年の決算変更届を提出する
- 経営状況分析を受ける
- 経営事項審査を受ける
- 総合評定値通知書を取得する
- 各自治体・発注機関の入札参加資格申請を行う
- 入札参加資格者名簿に登録される
- 電子入札システム等で案件を確認する
- 条件に合う公共工事へ参加する
このように、公共工事を目指すには、建設業許可、経審、入札参加資格の3つをセットで考える必要があります。
建設業許可は、公共工事に進むための土台です。
経審は、会社の経営規模・技術力・社会性などを点数化する手続きです。
入札参加資格は、実際に発注機関の入札に参加するための登録手続きです。
この流れを知らないまま進めると、
「建設業許可は取ったのに入札に参加できない」
「経審を受けたが、入札参加資格申請をしていなかった」
「決算変更届が未提出で経審の準備が進まない」
という状態になりやすいです。
公共工事を目指すなら、最初からゴールを「許可取得」ではなく「入札参加・受注」まで見据えて進めることが重要です。
まず建設業許可が必要になる
公共工事を目指す第一歩は、建設業許可の取得です。
経審は、建設業許可を受けた業者が公共工事を発注者から直接請け負うために受ける審査です。つまり、建設業許可を持っていない会社が、いきなり経審だけを受けて公共工事へ進むことはできません。
建設業許可を取得するには、常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、社会保険、欠格要件など、複数の要件を満たす必要があります。
公共工事を目指す場合は、ここでどの業種の許可を取るかが非常に重要です。
公共工事の入札では、参加したい工事に対応する許可業種が必要になります。
たとえば、土木一式工事、建築一式工事、舗装工事、管工事、電気工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事など、工事内容によって必要な許可業種が変わります。
「とりあえず何か1業種だけ取れば公共工事に参加できる」というものではありません。
自社が将来どの工事を受注したいのかを考え、その工事に対応する許可業種を選ぶ必要があります。
また、経審では業種ごとの完成工事高や技術者数も関係します。
そのため、許可業種の選び方は、単に許可を取るためだけでなく、将来の経審・入札参加にも影響します。
公共工事を目指す会社は、建設業許可の段階から次の点を確認しておきましょう。
・どの公共工事を狙いたいのか
・その工事に必要な許可業種は何か
・営業所技術者等を配置できるか
・資格者や実務経験者はいるか
・将来的に業種追加が必要にならないか
・決算変更届や経審まで見据えた管理ができるか
建設業許可は、公共工事に進むための入口です。
ただ許可を取るだけではなく、経審・入札参加資格まで見据えた許可設計をしておくことが大切です。
建設業許可だけでは入札には参加できない
公共工事を目指す会社が最初に誤解しやすいのが、建設業許可を取ればすぐに公共工事の入札に参加できると思ってしまうことです。
実際には、建設業許可だけでは足りません。
公共工事を発注者から直接請け負う場合は、経営事項審査を受ける必要があります。
さらに、その後に各自治体や発注機関の入札参加資格申請を行い、入札参加資格者名簿に登録される必要があります。
建設業許可、経審、入札参加資格の役割を整理すると、次のようになります。
建設業許可
一定規模以上の建設工事を請け負うための基本となる許可です。
経営事項審査(経審)
公共工事を元請として受注するために、会社の経営状況・規模・技術力・社会性などを点数化する審査です。
入札参加資格申請
各自治体や発注機関の入札に参加するための登録手続きです。
つまり、建設業許可は「建設業者としての土台」、経審は「公共工事向けの客観的評価」、入札参加資格は「発注機関ごとの参加登録」と考えると分かりやすいです。
経審を受けただけでも、まだ入札に参加できるとは限りません。
入札に参加したい自治体や発注機関ごとに、入札参加資格申請の受付期間、申請方法、必要書類、登録時期を確認する必要があります。
愛知県の令和8・9年度建設工事等の入札参加資格申請では、単体申請の随時受付が令和8年4月1日から令和10年1月31日までとされ、あいち電子調達共同システム(CALS/EC)による電子申請と添付書類の郵送で進める運用になっています。
このように、公共工事に参加するには、許可・経審・入札資格の順番を間違えないことが大切です。
建設業許可を取得したら、次に何をするべきか。
経審を受けたら、どの自治体に入札参加資格申請をするのか。
この流れを事前に決めておくことで、公共工事への参加が現実的になります。
経営事項審査(経審)とは
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業許可業者が受ける審査です。
経審では、会社の経営状況、経営規模、技術力、社会性などが数値化されます。
その結果として、総合評定値、いわゆるP点が通知されます。
このP点は、入札参加資格審査や格付けで重要な資料になります。
公共工事の発注機関は、入札に参加しようとする建設業者について資格審査を行います。
その際、客観的事項と発注者側の評価を組み合わせて、順位付けや格付けを行います。
経審は、そのうち客観的事項を評価するための制度です。
経審の評価は、主に次の項目で構成されます。
・経営規模
・経営状況
・技術力
・社会性等
・その他の客観的事項
完成工事高が大きい会社は、経営規模の面で評価されやすくなります。
資格者や技術職員が多い会社は、技術力の面で評価されやすくなります。
社会保険、建退共、法令遵守、防災協定、建設機械保有などは、社会性等の評価に関係します。
ただし、経審は単純に売上だけで決まるものではありません。
財務内容、技術者体制、社会保険、工事実績、法令遵守など、会社の総合的な管理体制が反映されます。
公共工事を本気で目指すなら、経審は毎年の結果を確認し、自社の強みと弱みを把握するための経営資料としても活用できます。
たとえば、
「完成工事高はあるが技術職員数が少ない」
「財務内容を改善した方がよい」
「社会性項目で取りこぼしがある」
「狙いたい業種の完成工事高が不足している」
といった課題が見えてきます。
経審は、公共工事に参加するための形式的な手続きではなく、公共工事を継続的に受注するための会社評価の土台です。
経審を受ける前に決算変更届を整える
経審を受ける前に、必ず確認したいのが決算変更届です。
建設業許可業者は、毎事業年度終了後に決算変更届を提出する必要があります。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、財務諸表、納税証明書などを提出します。
この決算変更届は、経審の土台になる資料です。
特に重要なのは、工事経歴書と財務諸表です。
経審では、業種ごとの完成工事高、工事実績、財務状況が評価に関係します。
そのため、決算変更届の内容が不正確だと、経審の準備でつまずくことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
・工事経歴書の業種分類が不自然
・完成工事高と兼業売上の区分が曖昧
・財務諸表の数字と工事施工金額が合っていない
・経審を受けたい業種の工事実績が整理されていない
・数年分の決算変更届が未提出になっている
・過去の副本を紛失している
公共工事を目指す場合、決算変更届は「毎年出すだけの書類」ではありません。
経審で評価される完成工事高や財務内容を整理するための重要資料です。
特に、どの業種で経審を受けるかを考える場合、工事経歴書の整理が重要になります。
リフォーム工事、改修工事、修繕工事などは、工事名だけでは業種判断が難しいことがあります。
内装仕上工事なのか、建築一式工事なのか、管工事なのか、電気工事なのか、塗装工事なのか、防水工事なのか。
この整理を毎年きちんとしておかないと、経審を受ける段階で過去の工事実績を確認するのに時間がかかります。
公共工事を目指すなら、決算変更届の段階から経審を意識しておくべきです。
決算後に税理士から決算書を受け取ったら、建設業許可用の財務諸表、工事経歴書、工事施工金額を正確に整え、経審へ進める状態にしておきましょう。
経営状況分析と総合評定値の流れ
経審の手続きでは、まず経営状況分析を受けます。
経営状況分析は、登録経営状況分析機関に申請する手続きです。
会社の財務諸表をもとに、収益性、安定性、健全性などが分析され、経営状況分析結果通知書が発行されます。
その後、許可行政庁に対して、経営規模等評価申請と総合評定値請求を行います。
総合評定値を請求する場合は、経営状況分析結果通知書を添付して請求します。経営規模等評価申請と総合評定値請求は同じ様式で行うことができます。
流れとしては、次のようになります。
- 決算書・建設業許可用財務諸表を準備する
- 決算変更届を提出する
- 登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請する
- 経営状況分析結果通知書を受け取る
- 経営規模等評価申請・総合評定値請求を行う
- 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書を受け取る
- 入札参加資格申請に進む
経審の手数料も確認しておきましょう。
経営規模等評価申請の手数料は、8,100円に審査対象業種1種類につき2,300円を加算した額です。
総合評定値請求の手数料は、400円に審査対象業種1種類につき200円を加算した額です。
経営状況分析の費用は、登録経営状況分析機関ごとに確認する必要があります。
たとえば、1業種で経営規模等評価申請と総合評定値請求を行う場合、行政手数料は次のような計算になります。
経営規模等評価申請:8,100円+2,300円=10,400円
総合評定値請求:400円+200円=600円
合計:11,000円
複数業種で経審を受ける場合は、対象業種数に応じて手数料が増えます。
また、行政書士へ依頼する場合は、経営状況分析申請、経審申請、入札参加資格申請の報酬が別途かかります。
経審は、書類の数も確認事項も多い手続きです。
決算変更届、経営状況分析、経審、入札参加資格申請を一連で依頼する場合は、どこまでが報酬に含まれているのか確認しておくと安心です。
入札参加資格申請とは
入札参加資格申請とは、自治体や発注機関の入札に参加するための登録手続きです。
経審を受けて総合評定値通知書を取得しても、それだけで自動的に公共工事の入札に参加できるわけではありません。
参加したい自治体や発注機関ごとに、入札参加資格申請を行う必要があります。
たとえば、愛知県の工事に参加したい場合は、愛知県の入札参加資格申請を行います。
名古屋市の工事に参加したい場合は、名古屋市の入札参加資格申請が必要になります。
その他、市町村、国の機関、独立行政法人など、それぞれの発注機関ごとに受付期間や必要書類が異なります。
入札参加資格申請では、次のような情報を登録します。
・商号または名称
・所在地
・代表者
・建設業許可番号
・許可業種
・経審の総合評定値
・希望する工事業種
・営業所情報
・納税状況
・社会保険加入状況
・資本関係・人的関係
・電子入札に関する情報
愛知県の令和8・9年度入札参加資格申請では、単体申請の随時受付について、あいち電子調達共同システム(CALS/EC)による電子申請と添付書類の郵送で進める運用になっています。申請日が令和8年4月10日以降の場合、登録予定日は申請日の属する月の翌々月の最初の県庁開庁日とされています。
この登録予定日の考え方は実務上とても重要です。
たとえば、すぐに入札へ参加したいと思っても、入札参加資格の登録日までは参加できない場合があります。
そのため、公共工事を目指すなら、入札参加資格申請の受付期間と登録時期を早めに確認しておく必要があります。
また、入札参加資格は一度登録すれば永久に有効というものではありません。
通常、2年ごとなど一定期間ごとに更新手続きがあります。
経審と同じく、入札参加資格も期限管理が重要です。
電子入札・案件参加までに必要な準備
入札参加資格者名簿に登録されたら、次は実際の入札案件を確認し、参加できる案件を探す段階に進みます。
愛知県の公共工事では、あいち電子調達共同システム(CALS/EC)が使われます。
入札参加資格申請も、単体申請についてはCALS/ECによる電子申請と添付書類の郵送で進める運用です。
電子入札に参加するには、システム利用の準備も必要です。
一般的には、次のような準備が関係します。
・電子入札用ICカード
・ICカードリーダー
・パソコン環境の設定
・電子調達システムの利用者登録
・代表者変更時のICカード登録変更
・入札公告の確認
・参加資格要件の確認
・配置予定技術者の確認
・同種工事実績の確認
・設計図書・仕様書の確認
・入札金額の積算体制
愛知県では、代表者が変更になった場合、電子入札に使うICカードの利用者登録や変更届の手続きが必要になります。
旧代表者名義のICカードでは電子入札に参加できない扱いになっているため、代表者変更がある会社は特に注意が必要です。
ここで重要なのは、入札参加資格があるからといって、すべての公共工事に参加できるわけではないという点です。
各案件には参加条件があります。
たとえば、次のような条件です。
・許可業種
・経審の点数
・所在地要件
・過去の工事実績
・配置予定技術者
・等級・格付け
・発注機関への登録業種
・入札方式
・施工実績
・社会保険加入状況
特に配置予定技術者は重要です。
公共工事では、主任技術者や監理技術者を適切に配置できるかが確認されます。
営業所技術者等と現場配置技術者の兼務には制限が生じることもあるため、入札参加前に確認が必要です。
公共工事を目指すには、許可や経審だけでなく、入札案件に対応できる社内体制も整える必要があります。
公共工事を目指す会社が注意すべきポイント
公共工事を目指す会社が注意すべきポイントは、手続きの順番と期限管理です。
建設業許可、決算変更届、経営状況分析、経審、入札参加資格申請、電子入札準備は、それぞれ別々の手続きです。
しかし、実務上はすべてつながっています。
どこか一つが遅れると、次の手続きも遅れます。
たとえば、決算変更届が未提出だと、経審の準備が進みにくくなります。
経営状況分析が遅れると、経審申請も遅れます。
経審結果通知書の取得が遅れると、入札参加資格申請の受付に間に合わない可能性があります。
入札参加資格の登録が遅れると、参加したい案件に間に合わないことがあります。
公共工事を目指す会社が特に確認したいポイントは次のとおりです。
- 建設業許可を取得しているか
- 狙う公共工事に対応する許可業種があるか
- 毎年の決算変更届を提出しているか
- 工事経歴書の業種分類が整理されているか
- 経審を受けたい業種の完成工事高があるか
- 経営状況分析に必要な財務諸表が整っているか
- 技術職員名簿に載せる資格者がいるか
- 社会保険や建退共などの確認資料があるか
- 経審の有効期限を管理しているか
- 入札参加資格申請の受付期間を確認しているか
- 電子入札用ICカードやシステム設定が済んでいるか
- 配置予定技術者を確保できるか
また、公共工事は「一度登録すれば勝手に仕事が来る」ものではありません。
入札公告を確認し、自社が参加できる案件を探し、積算し、技術者を配置し、競争に参加する必要があります。
そのため、最初から大きな案件を狙うよりも、まずは自社の規模・技術者・実績に合った工事から検討する方が現実的です。
公共工事を事業の柱にしたい場合は、単発の手続きではなく、毎年の許可管理・決算管理・経審対策・入札スケジュール管理を一体で行うことが重要です。
まとめ
公共工事を目指すには、建設業許可、経営事項審査、入札参加資格申請を順番に整える必要があります。
まず、建設業許可を取得します。
建設業許可は、公共工事へ進むための土台です。
ただし、建設業許可を取っただけでは、すぐに公共工事の入札へ参加できるわけではありません。
公共工事を発注者から直接請け負うには、経営事項審査を受ける必要があります。経審では、経営状況、経営規模、技術力、社会性などが評価され、総合評定値、いわゆるP点が算出されます。
経審を受ける前には、毎年の決算変更届を整えることが重要です。
工事経歴書、直前3年の工事施工金額、財務諸表の内容は、経審の基礎資料になります。
決算変更届を正確に作成していないと、経審の準備でつまずくことがあります。
経審では、まず登録経営状況分析機関で経営状況分析を受け、その結果通知書を添付して、経営規模等評価申請と総合評定値請求を行います。
経営規模等評価申請や総合評定値請求には、審査対象業種数に応じた手数料が必要です。
経審結果を取得した後は、各自治体や発注機関の入札参加資格申請へ進みます。
愛知県の令和8・9年度入札参加資格申請では、単体申請の随時受付について、あいち電子調達共同システム(CALS/EC)による電子申請と添付書類の郵送で進める運用になっています。
入札参加資格者名簿に登録された後は、電子入札の準備、ICカード、システム設定、配置予定技術者、案件ごとの参加条件確認が必要になります。
公共工事は、許可を取っただけ、経審を受けただけ、入札資格を取っただけで自動的に受注できるものではありません。
しかし、必要な手続きを順番に整えれば、民間工事とは別の受注ルートを作ることができます。
公共工事を目指したい建設業者の方は、まず自社がどの段階にいるのかを確認しましょう。
建設業許可がまだなのか。
許可はあるが決算変更届が未提出なのか。
経審を受ける準備ができているのか。
入札参加資格申請まで進める状態なのか。
ここを整理するだけでも、次にやるべきことが明確になります。
名古屋・愛知で公共工事への参加を検討している建設業者様は、建設業許可、決算変更届、経審、入札参加資格申請まで、一連の流れを早めに確認しておくことをおすすめします。
手続きが複数に分かれるため、自社だけで判断が難しい場合は、建設業許可・経審に対応している行政書士へ相談することで、現在地と必要な準備を整理しやすくなります。
建設業許可の取得・更新でお困りの方へ
「自社でも許可が取れるのか知りたい」「経管・専技の要件が不安」という段階でも構いません。
建設業許可の新規申請・更新・業種追加・事業年度終了届について、
現在の状況を確認したうえで、必要な手続きと費用の目安をご案内します。
新規申請(知事許可)
99,000円~(税込)
更新・業種追加
88,000円~(税込)
事業年度終了届
44,000円~(税込)
※証紙代・実費は別途。正式な費用は事前にお見積もりします。
許可が取れるか不安な段階でも、まずは要件確認からご相談いただけます。
※ご相談のみでも問題ありません。現在の状況をお伺いしたうえで、進め方をご案内します。
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