経営事項審査(経審)の基礎と建設業許可との関係を解説します。公共工事を受注するまでの流れ、経営状況分析、経営規模等評価、総合評定値、決算変更届、入札参加資格審査との違いまでわかりやすく説明します。
経営事項審査(経審)とは
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受ける審査です。
一般的には「経審」と呼ばれます。
国、都道府県、市町村などの公共工事を元請として受注したい場合、建設業許可を持っているだけでは足りません。
公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査を受け、さらに各発注機関の入札参加資格審査を受ける必要があります。
国土交通省関係の案内でも、経営事項審査は、国や地方公共団体などが発注する公共工事を直接請け負おうとする場合に必ず受ける必要がある審査として説明されています。
経審では、会社の経営規模、経営状況、技術力、社会性などが点数化されます。
その結果として、総合評定値、いわゆるP点が通知されます。
このP点は、公共工事の入札参加資格審査や格付けで使われる重要な指標です。
つまり、経審は、公共工事の世界に入るための入口になる手続きです。
民間工事だけを請け負う会社であれば、通常、経審を受ける必要はありません。
一方で、公共工事を元請として受注したい会社にとっては、建設業許可、決算変更届、経営状況分析、経審、入札参加資格審査という流れを理解しておくことが重要です。
経審と建設業許可の関係
経審は、建設業許可と密接に関係しています。
まず、経審を受ける前提として、建設業許可を受けている必要があります。
建設業許可を持っていない会社が、いきなり経審だけを受けて公共工事の元請を目指すことはできません。
建設業許可は、一定規模以上の建設工事を請け負うための基本となる許可です。
一方、経審は、建設業許可業者が公共工事を直接請け負うために受ける審査です。
この関係を整理すると、次のようになります。
建設業許可は、建設業を営むための基本的な許可です。
経審は、建設業許可業者が公共工事の元請受注を目指す場合に必要となる審査です。
入札参加資格審査は、各発注機関の入札に参加するための資格審査です。
つまり、建設業許可を取得しただけでは、公共工事の入札に参加できるとは限りません。
公共工事を元請として受注するには、建設業許可を取得したうえで、経審を受け、さらに発注機関ごとの入札参加資格審査を受ける流れになります。
また、経審を受けるには、建設業許可上の管理も重要です。
毎年の決算変更届が提出されていること、許可業種が整理されていること、営業所技術者等や常勤役員等に問題がないことなどが関係します。
建設業許可を取得した後の管理が不十分だと、経審の準備でつまずくことがあります。
経審は、建設業許可を持っている会社が次の段階として公共工事を目指すための手続きと考えると分かりやすいでしょう。
経審が必要になるケース
経審が必要になるのは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする場合です。
ここで重要なのは、「公共工事」と「直接請け負う」という点です。
国、地方公共団体、公共法人などが発注する建設工事を、元請として受注しようとする場合には、経審が必要になります。
一方で、民間工事だけを請け負う会社であれば、通常は経審を受ける必要はありません。
また、公共工事であっても、元請から下請として工事を請け負うだけであれば、発注者から直接請け負うわけではないため、経審が直ちに必要になるとは限りません。
ただし、元請会社から協力会社登録の条件として経審結果を求められるケースや、将来的に公共工事の元請を目指すために早めに経審を受けるケースもあります。
経審が必要になりやすいケースは次のとおりです。
・市町村の公共工事に入札参加したい
・県発注工事を元請として受注したい
・国の公共工事に参加したい
・公共工事の入札参加資格審査を申請したい
・元請として格付けを受けたい
・公共工事の受注を事業の柱にしたい
・経審のP点を確認して自社の評価を把握したい
・協力会社登録や取引先から経審結果を求められた
反対に、次のような場合は、通常、経審が必須ではないことが多いです。
・民間工事だけを請け負っている
・公共工事を下請として受けるだけである
・建設業許可はあるが公共工事に参加する予定がない
・入札参加資格審査を受ける予定がない
ただし、将来的に公共工事を目指す可能性がある会社は、経審の仕組みを早めに理解しておくことをおすすめします。
経審は、決算内容、完成工事高、技術者、社会保険、建退共、法令遵守など、日頃の会社管理が点数に反映されるためです。
直前になって準備しても、すぐに点数を大きく改善できない項目があります。
公共工事を事業戦略に入れるなら、早い段階から経審を意識した管理をしておくことが大切です。
公共工事を受注するまでの全体像
公共工事を受注するまでの流れは、建設業許可を取得して終わりではありません。
大きな流れとしては、次のようになります。
まず、建設業許可を取得します。
次に、毎年の決算後、決算変更届を提出します。
そのうえで、登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請します。
経営状況分析結果通知書を取得したら、経営規模等評価申請と総合評定値請求を許可行政庁へ行います。
経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書を受け取った後、各発注機関の入札参加資格審査を申請します。
その審査を通過して初めて、発注機関の入札参加資格者名簿に登録され、入札参加へ進むことができます。
愛知県でも、経営状況分析は登録経営状況分析機関へ申請し、経営規模等評価申請・総合評定値請求は愛知県知事へ行い、経営状況分析結果通知書を添付する流れと案内されています。
整理すると、次の流れです。
- 建設業許可を取得する
- 決算終了後、決算変更届を提出する
- 登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請する
- 経営状況分析結果通知書を取得する
- 許可行政庁へ経営規模等評価申請・総合評定値請求を行う
- 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書を受け取る
- 各発注機関へ入札参加資格審査を申請する
- 入札参加資格者名簿に登録される
- 公共工事の入札に参加する
ここで混同しやすいのが、経審と入札参加資格審査です。
経審は、全国的に統一された客観的事項の審査です。
一方、入札参加資格審査は、各発注機関が自らの基準で行う審査です。
経審を受けただけで、すべての公共工事に入札参加できるわけではありません。
経審を受けたうえで、参加したい自治体や機関の入札参加資格審査を受ける必要があります。
経営状況分析とは
経営状況分析とは、経審のうち、会社の財務状況を分析する手続きです。
経審では、経営状況、経営規模、技術力、社会性等が評価されます。
このうち、経営状況に関する分析、いわゆるY点の分析は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関が行います。
愛知県の案内でも、経営状況分析の申請は登録経営状況分析機関へ行うとされています。
経営状況分析では、会社の決算書をもとに、財務内容が数値化されます。
収益性、流動性、安定性、健全性などが分析され、経営状況分析結果通知書が発行されます。
この結果通知書は、経営規模等評価申請・総合評定値請求を行う際に必要になります。
つまり、経審を受けるときは、まず経営状況分析を先に行うのが基本です。
経営状況分析を受けずに、総合評定値を請求することはできません。
実務上は、決算変更届を作成し、建設業許可用の財務諸表を整えたうえで、経営状況分析を申請します。
ここで重要なのは、税務申告用の決算書と建設業許可用の財務諸表の整合性です。
経営状況分析では財務諸表が使われるため、完成工事高、完成工事原価、兼業売上、兼業原価などの区分が重要になります。
建設業以外の売上がある会社では、完成工事高と兼業売上の区分を誤ると、経審の評価にも影響する可能性があります。
経営状況分析は、単なる事前手続きではなく、P点を構成する重要な要素です。
公共工事を目指す会社は、日頃から決算内容や財務管理を意識しておくことが大切です。
経営規模等評価・総合評定値とは
経営規模等評価とは、経審のうち、経営状況分析以外の客観的事項を評価する手続きです。
具体的には、経営規模、技術力、社会性等が評価されます。
国土交通省関係の手引きでも、経営規模等は、経営状況以外の客観的事項であり、経営規模、技術力、社会性等から構成されると説明されています。
経営規模等評価では、完成工事高、自己資本額、利益額、技術職員数、元請完成工事高、労働福祉、建設業の営業年数、防災協定、法令遵守、建設機械保有状況など、さまざまな項目が評価されます。
そして、経営状況分析の結果と経営規模等評価の結果をもとに、総合評定値が算出されます。
この総合評定値が、一般にP点と呼ばれるものです。
P点は、公共工事の入札参加資格審査や格付けで使われる重要な数値です。
ただし、P点が高ければ必ず公共工事を受注できるというわけではありません。
公共工事の入札では、発注機関ごとの入札参加資格、格付け、地域要件、工事実績、配置予定技術者、価格競争、総合評価方式など、さまざまな要素が関係します。
経審は、その中でも客観的な会社評価の基礎になるものです。
愛知県の経審手続きでは、登録経営状況分析機関から経営状況分析結果通知書を取得した後、経営規模等評価の申請および総合評定値の請求を愛知県知事へ行う流れです。
つまり、経審の実務では、
経営状況分析結果通知書を取得する
経営規模等評価申請をする
総合評定値を請求する
結果通知書を受け取る
という流れになります。
公共工事を目指す会社にとって、P点は自社の客観的評価を示す重要な指標です。
毎年の経審結果を確認し、どの項目が強みで、どの項目が弱いのかを把握しておくことが、公共工事戦略の第一歩になります。
経審の評価項目
経審では、会社の状況が複数の項目に分けて評価されます。
大きく見ると、経営規模、経営状況、技術力、その他の審査項目、いわゆる社会性等に分類されます。
一般的には、経営規模をX、経営状況をY、技術力をZ、社会性等をWとして整理します。
これらをもとに、総合評定値Pが算出されます。
登録経営状況分析機関である建設業情報管理センターも、経審は経営状況、経営規模、技術力、その他の審査項目、社会性等について数値化し評価するものと説明しています。
経営規模では、完成工事高、自己資本額、利益額などが見られます。
完成工事高は、業種ごとの実績に関係するため、どの業種で経審を受けるかにも影響します。
経営状況では、財務内容が分析されます。
収益性や安全性などが数値化され、Y点として反映されます。
技術力では、技術職員数や元請完成工事高などが評価されます。
資格を持つ技術者の人数、監理技術者や主任技術者となり得る人材、公共工事で配置できる技術者体制が関係します。
社会性等では、労働福祉の状況、建設業の営業年数、防災協定、法令遵守、建設機械の保有、若年技術者の育成、ワーク・ライフ・バランス関係など、会社の社会的な取組みが評価されます。
経審の点数は、単に売上が大きければ高くなるというものではありません。
完成工事高、財務内容、技術者、社会保険、建退共、法令遵守、機械保有、若年者育成など、会社の総合的な管理体制が反映されます。
公共工事を目指す会社は、毎年の経審結果を確認し、どの項目を改善すべきかを把握することが重要です。
決算変更届との関係
経審と決算変更届は非常に密接に関係しています。
建設業許可業者は、毎事業年度終了後に決算変更届を提出する必要があります。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、財務諸表、納税証明書などを提出します。
経審では、この決算内容や工事実績が重要な基礎資料になります。
特に、完成工事高、工事経歴、財務諸表の数字は、経審の評価に直接関係します。
そのため、決算変更届を適当に作成していると、経審で問題になる可能性があります。
たとえば、工事経歴書の業種分類が不正確な場合、経審でどの業種の完成工事高として扱うかに影響します。
「リフォーム工事」「改修工事」といったあいまいな名称だけで整理していると、業種ごとの実績確認が難しくなることがあります。
また、財務諸表で完成工事高と兼業売上の区分が不適切だと、経営状況分析や経審の数値にも影響する可能性があります。
経審を受ける場合、決算変更届は単なる許可維持の届出ではなく、経審の土台になる資料です。
公共工事を目指す会社では、決算変更届の段階から経審を意識しておく必要があります。
具体的には、次の点に注意しましょう。
・工事経歴書を業種ごとに正確に整理する
・完成工事高と兼業売上を適切に区分する
・直前3年の工事施工金額と財務諸表の整合性を確認する
・経審を受けたい業種の工事実績を正確に把握する
・技術職員名簿に載せる人材を整理する
・社会保険、建退共、退職金制度などの確認資料を整える
・決算変更届の副本を毎年保管する
決算変更届を出していない年度があると、経審の前に過去分を整理しなければならないことがあります。
また、更新申請や業種追加申請にも影響します。
経審を受ける予定がある会社は、毎年の決算変更届を期限内に、正確な内容で提出しておくことが重要です。
経審の有効期間と毎年受ける必要性
経審には有効期間があります。
経審の有効期間は審査基準日、原則として直前決算日から起算して1年7か月とされ、有効期間が経過すると公共工事を請け負うことができなくなります。
この「1年7か月」という期間は、決算日から次の決算、税務申告、決算変更届、経営状況分析、経審申請までの事務処理期間を考慮したものと考えると分かりやすいです。
ただし、公共工事を継続して受注したい会社は、実務上、毎年経審を受ける必要があります。
一度経審を受ければ何年も使えるわけではありません。
毎年の決算内容をもとに、毎年経営状況分析と経審を受け、最新の総合評定値通知書を取得しておく必要があります。
経審の更新を忘れると、公共工事の入札参加資格があっても、受注や契約に支障が出る可能性があります。
特に、自治体の入札参加資格審査では、有効な経審結果が求められることが多いため、経審の有効期限管理は非常に重要です。
経審の管理で注意したいポイントは次のとおりです。
・決算日を基準にスケジュールを組む
・税務申告後、早めに決算変更届を作成する
・経営状況分析を早めに申請する
・経営規模等評価申請・総合評定値請求を行う
・総合評定値通知書の有効期限を管理する
・入札参加資格審査の受付期間を確認する
・公共工事を受注したい業種で経審を受ける
・最新の手引き・様式改正を確認する
公共工事を安定して受注したい会社は、経審を毎年の定期業務として管理する体制を整えておきましょう。
まとめ
経営事項審査、いわゆる経審は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業許可業者が受ける審査です。
建設業許可は建設業を営むための基本的な許可であり、経審は公共工事の元請受注を目指す場合に必要となる審査です。
建設業許可を取得しただけでは、公共工事の入札に参加できるとは限りません。
公共工事を受注するまでには、建設業許可、決算変更届、経営状況分析、経営規模等評価申請・総合評定値請求、入札参加資格審査という流れがあります。
愛知県では、経営状況分析は登録経営状況分析機関へ申請し、経営規模等評価申請・総合評定値請求は愛知県知事へ行う流れとされています。
経審では、経営規模、経営状況、技術力、社会性等が評価され、その結果として総合評定値、いわゆるP点が通知されます。
このP点は、公共工事の入札参加資格審査や格付けで使われる重要な指標です。
経審と決算変更届も密接に関係しています。
決算変更届で作成する工事経歴書、直前3年の工事施工金額、財務諸表は、経審の基礎資料になります。
そのため、公共工事を目指す会社では、毎年の決算変更届を経審を意識して正確に作成することが重要です。
経審の有効期間は、審査基準日から1年7か月とされています。公共工事を継続して受注したい会社は、実務上、毎年経審を受ける必要があります。
経審は、単なる点数計算の手続きではありません。
会社の完成工事高、財務内容、技術者体制、社会保険、建退共、法令遵守、営業年数など、日頃の経営管理が反映される制度です。
公共工事を受注したい会社は、建設業許可を取得した段階から、決算変更届、技術者管理、財務管理、社会保険関係、経審スケジュールを一体で管理しておくことが大切です。
建設業許可の取得・更新でお困りの方へ
「自社でも許可が取れるのか知りたい」「経管・専技の要件が不安」という段階でも構いません。
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