建設業許可の名義貸しについて、許可名義の貸し借り、常勤役員等・営業所技術者等・現場技術者の名義貸し、発覚するきっかけ、行政処分や罰則、許可要件を満たせない場合の正しい対応を行政書士が解説します。
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建設業許可の名義貸しとは
建設業許可の名義貸しとは、一般に、建設業許可を受けていない事業者が、許可業者の会社名や許可番号を使って工事を請け負う行為などを指します。
ただし、実務で「名義貸し」と呼ばれる行為は一つではありません。
許可業者の名義を別会社に使わせるケースだけでなく、実際には常勤していない人を常勤役員等や営業所技術者等として届け出るケース、現場に配置されていない人を主任技術者や監理技術者として書類に記載するケースも問題になります。
建設業許可は、会社名や許可番号だけに与えられているものではありません。
経営体制、技術者、財産的基礎、営業所、社会保険への加入などを確認したうえで、その事業者に対して与えられるものです。
そのため、知り合いの許可番号を借りたり、人の名前だけを申請書に記載したりして、実際の体制と異なる状態を作ることはできません。
「名前を借りるだけだから問題ない」
「実際に工事ができるなら大丈夫」
「元請からそうするように言われた」
という理由があっても、許可や技術者配置の要件を満たしたことにはなりません。
建設業許可では、書類の形式だけでなく、実際に誰が契約し、誰が常勤し、誰が現場を管理しているかが確認されます。
名義貸しに該当する代表的なケース
まず問題になりやすいのが、建設業許可を持たない会社が、許可業者の名義を使って工事を受注するケースです。
例えば、無許可業者が許可の必要な規模の工事を受注するため、知り合いの許可業者を契約上の元請として形式的に入れる場合です。
契約書や見積書には許可業者の名前が記載されていても、実際の打合せ、代金交渉、施工管理、請求、入金管理などを無許可業者が行っていれば、書類と実態が一致していません。
建築一式工事以外では、原則として税込500万円以上の工事を請け負う場合に、その工事に対応する建設業許可が必要です。
元請工事だけでなく、下請として請け負う場合にも許可の要否を確認しなければなりません。
また、一つの工事を複数の契約に分け、形式上の金額だけを500万円未満にしても、実態として一つの工事であれば、合計額を基準に判断される可能性があります。
許可が必要であるにもかかわらず、別会社の許可番号を表示したり、許可業者を形式的に間へ入れたりする方法では解決できません。
常勤役員等・営業所技術者等の名義貸しにも注意
建設業許可の申請で問題になりやすいのが、許可要件を満たすために人の名前だけを借りるケースです。
常勤役員等は、建設業の経営業務を適正に管理する体制を確保するための重要な要件です。
過去に役員経験がある人へ謝礼を支払い、実際には会社で勤務していないにもかかわらず、常勤役員等として申請することはできません。
営業所技術者等についても同様です。
営業所技術者等は、その営業所に常勤し、許可を受ける業種について必要な資格や実務経験を備えている必要があります。
別会社で働いている人、日常的に出勤していない人、名義だけを置いている人を営業所技術者等として届け出ることは認められません。
さらに、営業所技術者等と、工事現場へ配置する主任技術者・監理技術者は別の制度です。
現場へ実際に配置されていない人を主任技術者として施工体制台帳などへ記載したり、資格者の名前だけを借りて現場を運営したりすることも問題になります。
許可行政庁では技術者などの情報が共有されており、他社との重複、他の営業所への配置、別の許可申請との矛盾などが確認されることがあります。
資格証のコピーが用意できるというだけで、申請や現場配置の要件を満たすわけではありません。
名義貸しと一括下請負・丸投げの違い
名義貸しと混同されやすいものに、一括下請負、いわゆる丸投げがあります。
一括下請負とは、受注した建設工事について自社が実質的に関与せず、その全部または主要な部分を他の事業者へ請け負わせる行為です。
一方、名義貸しでは、書類上の契約当事者や許可業者と、実際に事業を行っている者が異なることが問題になります。
両者は重なることもありますが、同じものではありません。
建設工事の一部を専門業者へ下請発注すること自体は、通常の建設実務です。
電気、塗装、防水、内装、足場などを、それぞれの専門業者へ発注することまで禁止されているわけではありません。
問題になるのは、元請が施工計画、工程管理、品質管理、安全管理、発注者との協議、下請業者への指導調整などを行わず、契約と中間手数料だけを残して工事を他社へ任せている場合です。
形式上は元請として契約していても、施工へ実質的に関与していなければ、一括下請負と判断される可能性があります。
反対に、下請業者へ工事を発注していても、元請として必要な管理と調整を行い、工事完成に責任を負っているのであれば、直ちに名義貸しや丸投げになるわけではありません。
名義貸しに対する行政処分・罰則
名義貸しと呼ばれる行為が発覚した場合、実際の行為内容に応じて、複数の建設業法上の問題が生じます。
虚偽の申請によって許可を受けた場合には、不正な手段による許可取得として、許可取消しにつながる可能性があります。
工事現場に必要な主任技術者や監理技術者を配置していなかった場合、資格要件を満たさない人を配置していた場合、施工体制台帳へ虚偽の内容を記載した場合なども、監督処分の対象となり得ます。
一括下請負や無許可営業が伴っていれば、それぞれについても責任を問われる可能性があります。
違反の内容や程度によっては、指示処分、営業停止処分、許可取消処分だけでなく、刑事罰の対象になることもあります。
営業停止処分を受けると、その期間中は新たな請負契約の締結や、入札、見積り、交渉など、請負契約に付随する行為が制限されます。
建設会社にとっては、一定期間工事ができないというだけの問題ではありません。
処分情報が公表され、元請との協力会社登録、金融機関の評価、公共工事の入札参加、今後の許可申請や更新などに影響する可能性があります。
名義貸しは、単なる書類上の不備ではなく、会社の事業継続に関わる問題です。
名義貸しが発覚する主なきっかけ
名義貸しは、許可申請時だけに確認されるものではありません。
新規申請、更新申請、業種追加、営業所技術者等の変更届などでは、常勤性、資格、過去の経営経験、他社との重複などが確認されます。
営業所技術者等が退職した後も変更届を出さず、書類上だけ在籍している状態を続ければ、後の更新や変更手続きで矛盾が表面化する可能性があります。
工事現場では、施工体制台帳、施工体系図、作業員名簿、再下請負通知書、資格者証、安全書類などから、契約上の業者と実際の施工業者が確認されます。
書類に記載された主任技術者が現場内容を把握していない、名義上の元請が工程や品質を管理していないといった状況も、問題が発覚するきっかけになります。
そのほか、現場事故、近隣トラブル、工事代金の未払い、元請や下請との関係悪化、従業員の退職、行政庁への情報提供などから、実際の施工体制が確認されることもあります。
書類だけを整えても、現場の実態と一致していなければ問題を防ぐことはできません。
名義を貸した側・借りた側に生じるリスク
名義貸しは、借りた側だけの問題ではありません。
名義を貸した許可業者は、自社の名前で締結された契約や施工された工事について、発注者から責任を追及される可能性があります。
施工不良、工期遅延、安全事故、近隣被害などが発生したときに、「実際に施工したのは別会社だから関係ない」と説明しても、契約上の責任を免れられるとは限りません。
建設業法上の監督処分に加え、元請からの取引停止、協力会社登録の解除、損害賠償請求などへ発展する可能性もあります。
名義を借りた側にも、無許可営業や虚偽表示などの問題が生じます。
許可業者の名前で工事を受注すると、誰が正式な契約当事者なのかが曖昧になり、工事代金や追加工事費用を請求できなくなるリスクもあります。
元請から「当社の名義で契約するから問題ない」と提案された場合でも、その説明だけで安全とは判断できません。
契約関係、工事金額、必要な許可業種、現場での役割分担を自社でも確認する必要があります。
許可要件を満たせない場合の正しい対応
建設業許可を取りたいものの、常勤役員等や営業所技術者等の要件を満たせない場合でも、最初から名義を借りると判断するべきではありません。
まず確認したいのは、本当に要件を満たす人が社内にいないのかという点です。
過去の役員経験、個人事業主としての経験、建設業者での補佐経験、保有資格、学歴、実務経験などを確認すると、想定していなかった人が要件を満たしていることがあります。
過去の許可申請書、登記事項証明書、確定申告書、請負契約書、注文書、請求書などによって、経営経験や実務経験を証明できる可能性もあります。
社内で要件を満たせない場合には、実際に常勤する役員や技術者を採用・選任する方法を検討します。
資格取得や実務経験の完成を待つ、取得する許可業種を見直す、許可が不要な範囲の工事に限定しながら体制を整えるという選択肢もあります。
ただし、許可基準を下回るように一つの工事を形式的に分割する方法は適切ではありません。
重要なのは、会社の実態に合った形で許可要件を整え、それを資料で証明できる状態にすることです。
「経験はあるが証明方法が分からない」
「資格者はいるが営業所技術者等になれるか判断できない」
「元請から早く許可を取るよう求められている」
という場合は、申請書を作り始める前に要件を整理した方が、結果的に早く正規の許可取得へ進めます。
まとめ|名義を借りる前に許可要件を確認する
建設業許可の名義貸しには、許可業者の会社名や許可番号を別の事業者へ使わせる行為だけでなく、常勤していない人を常勤役員等・営業所技術者等として届け出る行為や、現場にいない人を主任技術者・監理技術者として記載する行為も含まれます。
名義貸しと一括下請負は異なる問題ですが、許可業者が形式的に契約へ入り、実際の施工や管理を別会社へ任せている場合には、複数の違反が問題になる可能性があります。
違反が発覚すれば、指示処分、営業停止、許可取消し、刑事罰だけでなく、元請からの取引停止や信用低下など、事業全体に影響が及びかねません。
建設業許可は、会社名や許可番号だけを借りて利用できる制度ではありません。
一方で、自社では要件を満たせないと思っていても、過去の経営経験、資格、学歴、実務経験、社内の人員配置を整理することで、正規に申請できる可能性があります。
名義を借りることを検討する前に、まずは現在の会社体制で許可要件を満たせるかを確認することが重要です。
建設業許可の取得・更新をお考えの方へ
「自社でも許可が取れる?」という段階から
ご相談いただけます
建設業許可は、経管・専任技術者・財産要件・営業所要件など、
申請前に確認すべき要件があります。
書類がすべて揃っていない段階でも、現在の状況から申請可能性と必要な手続きを整理します。
※申請手数料・証明書取得費用等の実費は別途必要です。 正式な費用は、申請内容や現在の状況を確認したうえで事前にお見積もりします。
ご相談のみでも問題ありません。現在の状況を確認したうえで、申請可能性・必要な手続き・費用をご案内します。
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※許可要件や必要となる証明資料は、会社・個人の状況、取得する業種、これまでの経験等によって異なります。 現在の状況を確認したうえで、対応可能な範囲と必要な手続きをご案内します。


