建設業許可の経営業務管理責任者、現在の常勤役員等が不在になった場合の対応を解説します。後任者の選任、直接補佐体制、変更届、許可要件を欠いた場合のリスク、廃業届・一部廃業、事業承継時の再構築までわかりやすく説明します。
経営業務管理責任者が不在になるとどうなるのか
建設業許可でいう経営業務管理責任者、いわゆる「経管」が不在になった場合、会社は早急に対応する必要があります。
現在の制度では、以前の「経営業務管理責任者」は「常勤役員等」などの表現に整理されています。
ただし、建設業許可の実務では、今でも「経管」「経管変更」「経管がいない」という言い方がよく使われます。
経管、つまり常勤役員等は、建設業許可を維持するための重要な要件です。
営業所技術者等が技術面の要件であるのに対し、常勤役員等は建設業を適正に経営できる体制を示す要件です。
そのため、経管として届け出ていた代表者や役員が退任したり、死亡したり、非常勤になったり、別会社の業務に専従するようになった場合、建設業許可の維持に影響する可能性があります。
特に注意すべきなのは、経管不在は単なる役員変更では済まないという点です。
役員の就任・退任だけであれば、通常の役員変更届で済むことがあります。
しかし、その役員が建設業許可上の常勤役員等であった場合、後任者が要件を満たすかどうかを確認しなければなりません。
後任者がいない状態で放置すると、許可要件を欠いた状態になる可能性があります。
許可要件を欠いたまま営業を続けることは非常に危険です。
更新申請や業種追加申請の際に問題になるだけでなく、場合によっては廃業届や一部廃業の検討が必要になることもあります。
経管不在が発生した場合は、まず後任者の有無、代替体制の可否、届出期限、許可維持の見込みを早急に確認することが重要です。
現在は「常勤役員等」として整理されている
以前の建設業許可制度では、「経営業務の管理責任者」という言葉が使われていました。
現在は、許可要件として「常勤役員等」や「常勤役員等を直接に補佐する者」などの表現で整理されています。
国土交通省は、建設業許可の要件として、法人の場合は常勤役員等のうち1人が一定の建設業に関する経営業務管理責任者としての経験などを有することを示しています。
愛知県の要件案内でも、適正な経営体制として、常勤役員等のうち1人が、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する場合などが示されています。
また、一定の経験を有する常勤役員等を置き、財務管理、労務管理、業務運営について5年以上の建設業の業務経験を有する者を直接補佐者として置く体制も整理されています。
つまり、現在の制度では、旧来の「経管1人」の考え方だけでなく、一定の要件を満たす常勤役員等と直接補佐者による体制も認められる場合があります。
ただし、これは誰でも簡単に代替できるという意味ではありません。
常勤役員等の経験内容、直接補佐者の業務経験、財務管理・労務管理・業務運営の担当実態、常勤性などを資料で確認できる必要があります。
また、直接補佐体制を使う場合でも、中心となる常勤役員等が必要です。
完全に役員経験者がいない会社や、建設業の経営経験を説明できる人がいない会社では、代替体制を組むことが難しい場合があります。
経管不在の相談では、まず旧経管という言葉だけで考えるのではなく、現在の「常勤役員等」の要件で再確認することが大切です。
経管不在になりやすいケース
経管不在は、会社の重要な節目で発生しやすい問題です。
代表的なのは、代表者や役員の退任です。
建設業許可取得時に、代表取締役を常勤役員等として届け出ていた会社で、その代表取締役が退任すると、常勤役員等の要件に影響します。
次に多いのが、事業承継です。
先代社長が長年建設業を営んできたことで許可を維持していた会社で、子や後継者へ代表者を交代するケースです。
このとき、後継者に十分な建設業経営経験がないと、常勤役員等の要件を満たせない可能性があります。
また、死亡や急病によって突然不在になるケースもあります。
特に小規模な建設会社では、代表者1人が経管、営業所技術者等、営業、現場管理を兼ねていることがあります。
このような会社で代表者が突然不在になると、許可要件全体に大きな影響が出ます。
経管不在になりやすいケースは次のとおりです。
・常勤役員等として届け出ていた代表者が退任した
・常勤役員等が死亡した
・常勤役員等が病気や高齢により常勤できなくなった
・代表者変更や事業承継を行った
・常勤役員等が非常勤役員になった
・常勤役員等が別会社の業務に専従するようになった
・常勤役員等が他社の常勤役員を兼ねるようになった
・法人化や組織変更により役員構成が変わった
・後継者の経営経験が不足している
・社内に建設業経営経験を持つ役員がいない
特に危険なのは、登記だけ先に進めてしまうケースです。
代表者変更登記や役員退任登記をした後で、建設業許可上の常勤役員等がいなくなっていたことに気づくと、対応が非常に難しくなります。
経管に関わる人事や事業承継は、登記前に建設業許可への影響を確認することが重要です。
まず確認すべきこと
経管が不在になった場合、最初に確認すべきなのは、現在の建設業許可で誰が常勤役員等として届け出られているかです。
過去の許可申請書副本、更新申請書副本、変更届副本を確認し、常勤役員等として届け出ている人を特定します。
次に、その人がいつ、どのような理由で要件を満たさなくなったのかを確認します。
退任日、死亡日、非常勤化した日、他社勤務が始まった日、代表者変更日などです。
常勤役員等の変更は、愛知県では事実発生後2週間以内の届出事項として案内されています。
そのため、変更が発生した日を把握することは非常に重要です。
次に、後任候補者がいるかを確認します。
後任候補者がいる場合、その人が建設業の経営経験を有しているか、常勤役員等として申請会社に常勤しているかを確認します。
単に役員に就任しているだけでは足りません。
建設業の経営経験と常勤性を資料で説明できる必要があります。
さらに、直接補佐体制を使えるかも検討します。
常勤役員等単独では要件を満たしにくい場合でも、一定の要件を満たす常勤役員等と、財務管理・労務管理・業務運営の直接補佐者を置くことで、適正な経営体制として認められる可能性があります。
確認すべき主な項目は次のとおりです。
- 現在届け出ている常勤役員等は誰か
- その人が不在になった日はいつか
- 不在になった理由は退任、死亡、非常勤化、兼務、病気などのどれか
- 後任候補者はいるか
- 後任候補者に建設業の経営経験があるか
- 後任候補者は申請会社に常勤しているか
- 直接補佐体制を組めるか
- 財務管理、労務管理、業務運営を補佐できる人材がいるか
- 許可を維持できない場合、一部廃業または廃業届が必要か
経管不在では、感覚的に「何とかなるだろう」と進めるのは危険です。
まずは現在の届出内容と後任者の要件を正確に確認することが出発点です。
後任者を常勤役員等にできる場合
経管不在になった場合でも、後任者が常勤役員等の要件を満たしていれば、変更届を提出して許可を維持できる可能性があります。
最も分かりやすいのは、後任者が建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有している場合です。
たとえば、現在の会社で長年取締役として建設業の経営に関わっていた人や、過去に別の建設会社で代表取締役や取締役として経営経験を積んでいた人などです。
愛知県の要件案内でも、常勤役員等のうち1人が、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する場合などが示されています。
後任者を常勤役員等にする場合、確認すべきポイントは大きく2つあります。
1つ目は、経営経験です。
どの会社で、どの期間、どの立場で、建設業の経営業務に関わっていたのかを確認します。
法人であれば、役員としての在任期間、会社が建設業を営んでいたこと、建設業の経営業務に関与していたことを資料で示す必要があります。
個人事業主としての経験を使う場合は、確定申告書、請負契約書、注文書、請求書などが関係することがあります。
2つ目は、常勤性です。
後任者は、申請会社に常勤している必要があります。
他社で常勤勤務している人、他社の常勤役員である人、遠方に居住していて通勤実態が不自然な人などは、常勤性に問題が出る可能性があります。
後任者の確認で関係する資料は次のとおりです。
・履歴事項全部証明書
・過去の建設業許可申請書副本
・過去の決算変更届副本
・工事経歴書
・確定申告書
・請負契約書
・注文書
・請求書
・役員就任期間が分かる資料
・常勤性を確認できる社会保険関係資料
・役員報酬の支払状況が分かる資料
・住民票
・他社兼務状況を確認する資料
後任者がいる場合でも、経営経験と常勤性を証明できなければ、変更届はスムーズに進みません。
経管不在が発生する前、特に代表者交代や事業承継の前に、後任者の要件を確認しておくことが重要です。
直接補佐体制による代替措置
後任者が従来型の経管経験を十分に満たしていない場合でも、直接補佐体制による代替措置を検討できることがあります。
現在の建設業許可制度では、一定の経験を持つ常勤役員等を置き、その常勤役員等を直接に補佐する者として、財務管理、労務管理、業務運営の経験を有する者を配置する体制が認められる場合があります。
愛知県の要件案内でも、常勤役員等のうち1人が一定の経験を有し、かつ、財務管理、労務管理、業務運営について5年以上の建設業の業務経験を有する者を直接補佐者として置く体制が整理されています。
この制度は、事業承継や組織的な経営体制を前提に、従来の「1人の経管経験者」に頼りすぎない形で経営体制を確認するものです。
ただし、直接補佐体制は、誰でも形式的に置けばよいというものではありません。
直接補佐者には、建設業に関する財務管理、労務管理、業務運営について、それぞれ一定の業務経験が必要です。
財務管理とは、資金繰り、予算管理、会計管理、経理、資金調達などに関する業務です。
労務管理とは、従業員の採用、社会保険、労働時間管理、安全衛生、人事管理などに関する業務です。
業務運営とは、請負契約、工事管理、営業管理、取引先対応、社内業務体制の管理などに関する業務です。
これらの経験を、誰が、どの期間、どのような立場で担当していたかを説明できる必要があります。
愛知県の様式ページでも、常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書、常勤役員等の略歴書、直接補佐する者の略歴書などの様式が公開されています。
直接補佐体制を検討する場合の確認ポイントは次のとおりです。
- 中心となる常勤役員等がいるか
- その常勤役員等が一定の経験を有しているか
- 財務管理を補佐する者がいるか
- 労務管理を補佐する者がいるか
- 業務運営を補佐する者がいるか
- 各補佐者に5年以上の建設業の業務経験があるか
- 補佐者が申請会社で実際にその業務を担っているか
- 常勤性や組織図、職務分掌を説明できるか
直接補佐体制は、経管不在時の有力な代替措置になり得ます。
しかし、資料準備や説明が複雑になりやすいため、安易に「補佐者を置けば大丈夫」と考えるのは危険です。
実際に使えるかどうかは、会社の組織体制、役員経験、補佐者の業務経験、証明資料の有無によって判断する必要があります。
後任者がいない場合の対応
後任者もおらず、直接補佐体制も組めない場合は、許可要件を欠く可能性があります。
この場合、最も危険なのは、そのまま放置してしまうことです。
常勤役員等は建設業許可の要件です。
その要件を満たせない状態で営業を続けることは、許可管理上大きな問題になります。
愛知県では、常勤役員等の変更が2週間以内の届出事項とされているほか、営業所技術者等の削除や欠格要件該当、廃業についても届出事項として整理されています。廃業は廃業から30日以内、許可業種の一部を廃業する場合は変更届等の提出が必要とされています。
経管不在で後任者がいない場合、考えられる対応は次のとおりです。
・要件を満たす役員を社内から選任する
・過去の役員経験者を常勤役員として復帰させる
・建設業経営経験を持つ人材を役員として迎える
・直接補佐体制を組めるか再確認する
・代表者交代や役員退任の時期を見直す
・一部業種の廃業を検討する
・許可全体の廃業届を検討する
・許可換えや組織再編の可否を確認する
・許可行政庁または専門家に相談する
ただし、外部から経験者を迎える場合でも、名義だけの役員では足りません。
その人が申請会社に常勤し、実際に建設業の経営業務に関与する必要があります。
形式的に名前だけ借りるような対応は、名義貸しや虚偽申請のリスクにつながるため絶対に避けるべきです。
また、先代社長が退任予定で、後継者の経験が足りない場合は、先代社長を一定期間、常勤役員等として残す方法を検討できることがあります。
ただし、実際に常勤性が維持できることが前提です。
完全に引退して業務に関与しない人を形式上だけ残しても、常勤役員等として認められるとは限りません。
後任者がいない場合は、無理に届出を作るのではなく、許可を維持できる体制を本当に再構築できるかを冷静に判断する必要があります。
事業承継・代表者交代での再構築方法
経管不在の問題は、事業承継や代表者交代の場面で特に多く発生します。
先代社長が長年建設業を営み、その経験によって建設業許可を維持していた会社では、後継者への交代時に常勤役員等の要件確認が不可欠です。
再構築の基本は、代表者交代の前に、後継者が常勤役員等の要件を満たすか確認することです。
後継者がすでに取締役として5年以上建設業の経営に関わっている場合は、比較的スムーズに進められる可能性があります。
一方、後継者が最近入社したばかり、現場経験はあるが役員経験がない、経営業務への関与が浅いという場合は注意が必要です。
この場合、いきなり先代社長が退任すると、常勤役員等の要件を満たせなくなる可能性があります。
再構築の方法としては、次のようなものが考えられます。
まず、先代社長を一定期間、常勤役員等として残す方法です。
後継者が経験を積むまで、先代社長が常勤役員等として会社に関与し続ける形です。
ただし、先代社長が実際に常勤していることが必要です。
名義だけ役員として残す方法は認められません。
次に、後継者を役員として早めに登用し、経営業務の経験を積ませる方法です。
将来の事業承継を見据え、数年前から取締役として経営に関与させておけば、後の常勤役員等の要件確認がしやすくなります。
また、直接補佐体制を検討する方法もあります。
後継者が一定の経験を有し、財務管理、労務管理、業務運営を補佐する社内人材がいる場合は、組織的な経営体制として再構築できる可能性があります。
さらに、建設業経営経験のある外部人材を役員として迎える方法もあります。
ただし、この場合も常勤性と実際の経営業務への関与が必要です。
事業承継時に確認すべきポイントは次のとおりです。
- 現在の常勤役員等は誰か
- 先代社長はいつ退任する予定か
- 後継者の役員経験は何年あるか
- 後継者は建設業の経営業務に関与しているか
- 後継者の常勤性を説明できるか
- 直接補佐体制を組める社内人材がいるか
- 代表者変更登記の前に建設業許可上の要件確認をしているか
事業承継では、税務、株式、相続、金融機関対応に意識が向きがちです。
しかし、建設業許可業者の場合は、常勤役員等の要件を維持できるかが極めて重要です。
代表者交代の登記をする前に、建設業許可上の経営体制を確認しておきましょう。
経管不在を放置するリスク
経管不在を放置すると、建設業許可の維持に重大なリスクが生じます。
まず、更新申請で問題になります。
建設業許可の更新では、現在も許可要件を満たしているかが確認されます。
その際、常勤役員等として届け出ている人がすでに退任していた、死亡していた、非常勤になっていたということが分かると、過去にさかのぼって状況整理が必要になります。
次に、業種追加申請や許可換え申請にも影響します。
新たな申請を行う際には、現在の許可情報と許可要件が適正に維持されていることが前提になります。
経管変更届が漏れている場合、申請前に変更届や要件確認を整理しなければならない可能性があります。
また、元請や金融機関からの信用にも影響します。
建設業許可は、元請との取引、協力会社登録、入札、金融機関審査などで確認される重要な許可です。
許可要件に関わる役員体制が実態と合っていない場合、会社の許可管理に不安を持たれる可能性があります。
さらに、経管不在のまま名義だけの役員を立てることは絶対に避けるべきです。
実際に常勤していない人や、経営業務に関与していない人を形式的に常勤役員等として届け出ると、虚偽申請や名義貸しの問題につながるおそれがあります。
経管不在を放置する主なリスクは次のとおりです。
・許可要件を欠く可能性がある
・更新申請で補正や追加対応が必要になる
・業種追加や許可換えが進まない
・廃業届や一部廃業が必要になる可能性がある
・元請や取引先からの信用に影響する
・過去の変更届漏れをまとめて整理する負担が増える
・形式的な後任者選任が虚偽申請リスクにつながる
・事業承継後に許可を維持できない可能性がある
経管不在は、会社の中では「役員が辞めた」「社長が交代した」という出来事に見えるかもしれません。
しかし、建設業許可上は、許可の根幹に関わる問題です。
不在が判明した時点で、早急に後任者、直接補佐体制、廃業届の要否を確認する必要があります。
まとめ
経営業務管理責任者、いわゆる経管が不在になった場合は、建設業許可の維持に直結する重要問題として早急に対応する必要があります。
現在の制度では、旧経管は「常勤役員等」などの要件として整理されています。
法人の場合、一定の建設業経営経験を持つ常勤役員等を置くこと、または一定の経験を有する常勤役員等と直接補佐者による体制を整えることが必要になります。
愛知県では、常勤役員等の変更は事実発生後2週間以内の届出事項として案内されています。
経管不在になった場合、まず現在届け出ている常勤役員等が誰かを確認します。
そのうえで、その人がいつ、なぜ要件を満たさなくなったのかを整理し、後任候補者がいるかを確認します。
後任者がいる場合は、建設業の経営経験と常勤性を資料で証明できるかを確認します。
後任者が従来型の経管経験を十分に満たしていない場合でも、一定の条件を満たせば、常勤役員等と直接補佐者による体制を検討できることがあります。
ただし、直接補佐体制には、財務管理、労務管理、業務運営に関する5年以上の建設業の業務経験などが必要になるため、形式的に人を置くだけでは足りません。
後任者もおらず、直接補佐体制も組めない場合は、許可要件を欠く可能性があります。
この場合、許可業種の一部廃業や廃業届の検討が必要になることがあります。
愛知県では、廃業は廃業から30日以内、許可業種の一部を廃業する場合は変更届等の提出が必要と案内されています。
特に事業承継や代表者交代では、登記を先に進める前に、建設業許可上の常勤役員等の要件を確認することが重要です。
先代社長が退任した後に、後継者が要件を満たしていないことが分かると、許可維持に大きな問題が生じます。
経管不在を放置すると、更新申請、業種追加、元請取引、許可管理全体に影響します。
建設業許可を安定して維持するためには、常勤役員等の退任・死亡・非常勤化・代表者交代が発生した時点で、後任者の要件、直接補佐体制、届出期限、廃業届の要否を速やかに確認しましょう。
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