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建設業許可業者の帳簿保存義務とは?保存期間・必要書類・注意点を解説

建設業許可業者に義務付けられている帳簿保存義務について解説します。営業所ごとの帳簿備付け、保存期間、契約書・施工体制台帳・営業に関する図書の保存、違反リスクまでわかりやすく説明します。

建設業許可業者には帳簿保存義務がある


建設業許可を取得した会社には、許可を維持するためのさまざまな義務があります。

その中でも見落とされやすいのが帳簿保存義務です。

建設業許可を取得すると、決算変更届や更新申請に目が向きがちですが、日常業務の中で作成・保存すべき書類もあります。

建設業法では、建設業者に対して営業所ごとに帳簿を備え、一定期間保存することを求めています。

つまり、建設業許可を取った後は、工事ごとの契約内容や引渡し状況、下請契約の内容などを記録し、後から確認できる状態にしておかなければなりません。

これは単なる事務作業ではありません。

建設工事は契約金額が大きく、発注者・元請・下請・近隣住民など多くの関係者が関わります。

そのため、後日トラブルが発生した際に契約内容や施工体制を確認できる資料を残しておくことが重要になります。

帳簿保存義務は、法令遵守のためだけでなく、会社自身を守るための管理体制でもあります。

帳簿保存義務の対象になる事業者


帳簿保存義務は、建設業許可を受けている建設業者に課される義務です。

法人だけでなく、個人事業主として建設業許可を取得している場合も対象になります。

また、元請業者だけが対象になるわけではありません。

建設業者として請負契約を締結している以上、工事ごとの帳簿管理が必要になります。

ただし、保存すべき内容は工事の立場によって変わります。

発注者から直接請け負う元請工事なのか、元請から請け負う下請工事なのかによって、保存する資料や確認すべき事項が異なることがあります。

特定建設業者や、施工体制台帳を作成する必要がある工事では、さらに管理すべき書類が増える場合があります。

実務上は、

「小さい会社だから関係ない」

「一人親方だから帳簿は不要」

と思われることがあります。

しかし、建設業許可を受けている以上、規模にかかわらず帳簿保存義務を意識する必要があります。

帳簿管理が不十分なまま放置していると、更新時や行政庁からの確認時、取引先からの調査時に対応できなくなる可能性があります。

帳簿には何を記載するのか


建設業法上の帳簿には、建設工事に関する重要事項を記載します。

主な内容は、営業所の代表者に関する事項、請け負った建設工事の契約内容、注文者との契約日、工事名、工事現場の所在地、注文者の情報、完成検査や引渡しに関する年月日などです。

また、下請契約を締結した場合には、下請負人に請け負わせた工事の名称、工事現場の所在地、下請負人との契約日、下請負人の商号や住所、許可番号、引渡しに関する事項なども記録する必要があります。

ここで重要なのは、単に請求書や契約書を保管しておくだけではなく、必要な事項が後から確認できる状態にしておくことです。

実務上は、工事台帳や案件管理表を作成し、契約書・注文書・請求書・引渡し関係資料と紐づけて管理すると分かりやすくなります。

建設会社では、現場ごとに書類が分散しがちです。

現場担当者が契約書や注文書を保管している一方で、経理担当者は請求書だけを管理しているというケースもあります。

この状態では、いざ帳簿を確認しようとしても情報が揃いません。

工事ごとの情報を会社として一元的に管理する仕組みを作ることが重要です。

帳簿に添付して保存する書類


帳簿には、関連する添付書類も保存する必要があります。

代表的なものは契約書またはその写しです。

建設工事では、請負契約の内容を明確にすることが非常に重要です。

契約書、注文書、注文請書、請求書、検収書、引渡書類などは、後から工事内容や金額、工期を確認するうえで重要な資料になります。

また、特定建設業者が一定の下請契約を締結した場合には、下請代金の支払状況を証明する書類が必要になることがあります。

領収書や振込記録、支払明細などが関係します。

さらに、施工体制台帳を作成した場合には、工事完了後に必要部分を抜粋して帳簿の添付書類として保存する必要があります。

施工体制台帳は、どの業者がどの工事を担当し、どの技術者が配置されているかを確認するための重要な資料です。

元請工事で下請業者を使う場合には、施工体制台帳や施工体系図の作成・保存が問題になることがあります。

帳簿保存義務を考える際は、帳簿本体だけでなく、その裏付けとなる添付書類まで含めて管理する必要があります。

保存期間は原則5年


帳簿の保存期間は、原則として5年間です。

この5年という期間は、工事の目的物を引き渡した日から考えるのが基本です。

そのため、契約日や請求日ではなく、工事完了・引渡しのタイミングを意識して保存期間を管理する必要があります。

実務上は、

「決算が終わったから古い資料を処分した」

「税務上の保存期間だけを見て整理した」

というケースがあります。

しかし、建設業法上の帳簿保存義務は、税務書類の保存とは目的が異なります。

税務上の保存義務を満たしていても、建設業法上必要な資料が不足していれば問題になります。

特に工事関係書類は、税務上の経理資料としてだけでなく、建設業法上の帳簿・添付書類としての意味も持ちます。

保存期間を判断する際には、税務だけでなく建設業法上の保存義務も確認することが大切です。

また、5年を経過していない工事については、紙資料や電子データを整理し、後からすぐ確認できる状態にしておく必要があります。

10年保存が必要になるケース


帳簿保存義務では、原則5年保存だけでなく、10年保存が必要になるケースにも注意が必要です。

特に発注者と締結した住宅を新築する建設工事に関するものについては、10年間の保存が必要とされています。

住宅新築工事では、引渡し後に瑕疵や施工不良が問題になることもあります。

そのため、長期間にわたって契約内容や施工に関する資料を確認できるようにしておく必要があります。

また、営業に関する図書についても10年間の保存が求められるものがあります。

営業に関する図書には、完成図、発注者との打合せ記録、施工体系図などが含まれます。

特に元請として工事を直接請け負う場合には、こうした図書の管理が重要になります。

保存期間を一律5年と考えていると、10年保存が必要な書類を誤って廃棄してしまうおそれがあります。

建設会社では、工事の種類や立場に応じて、5年保存と10年保存を分けて管理することが望ましいです。

営業所ごとに保存する必要がある


帳簿保存義務で見落とされやすいのが、営業所ごとの保存です。

建設業法では、営業所ごとに帳簿を備えることが求められています。

そのため、複数営業所を持つ会社では、すべての工事書類を本社だけで一括管理していれば必ず問題ない、とは限りません。

もちろん実務上、電子データで本社が一元管理している会社もあります。

しかし、建設業許可上の営業所ごとに、どの営業所がどの契約を扱ったのか、どの工事を請け負ったのかが確認できる状態にしておく必要があります。

営業所を追加した会社や、支店で契約業務を行っている会社は特に注意が必要です。

本社では把握していない契約書や注文書が支店に保管されている場合、帳簿管理が不十分になる可能性があります。

また、営業所廃止や移転を行った場合には、過去の工事書類をどこで保存するのかも整理しておくべきです。

営業所ごとの帳簿管理は、更新申請や経営事項審査、行政庁からの確認時にも重要になります。

電子保存はできるのか


帳簿や工事関係書類は、紙だけでなく電子データで管理することもあります。

近年は、契約書や注文書をPDFで保存したり、クラウド上で工事台帳を管理したりする会社も増えています。

電子保存を行う場合に重要なのは、後から内容を確認できる状態にしておくことです。

単にデータがどこかに残っているだけでは不十分です。

工事名、発注者名、契約日、工期、請負金額、下請契約の有無などを検索できる状態にしておくと実務上も使いやすくなります。

また、電子データは紙よりも紛失しにくい一方で、ファイル名が不明確だと探せなくなることがあります。

例えば、

「請求書.pdf」

「契約書スキャン.pdf」

のような名前だけでは、数年後にどの工事の資料か分からなくなる可能性があります。

「202○-〇〇邸新築工事_契約書」のように、工事名や年度が分かる形で管理するとよいでしょう。

電子保存を行う場合でも、改ざん防止やバックアップ体制を整えておくことが重要です。

帳簿保存でよくある失敗


帳簿保存でよくある失敗は、必要な書類が社内に分散していることです。

営業担当者が注文書を持っている、現場監督が工程表や打合せ記録を持っている、経理担当者が請求書だけを管理しているという状態では、後から工事全体を確認することが難しくなります。

また、完了した工事から順に資料を処分してしまうケースもあります。

特に小規模な工事や短期間の工事では、

「大した工事ではないから保存しなくてもよい」

と考えてしまうことがあります。

しかし、帳簿保存義務は工事の規模だけで判断するものではありません。

建設業者として請負契約を締結した以上、必要な記録を残しておく必要があります。

さらに、保存期間の起算点を誤ることもあります。

契約日から5年ではなく、工事目的物の引渡し後から保存期間を考える必要があります。

長期工事では、契約日と引渡し日が大きく離れることもあるため注意が必要です。

帳簿保存は後回しにすると手間が増えます。

工事完了時に必要資料をまとめる運用を作ることが、最も確実な対策です。

まとめ


建設業許可業者には、営業所ごとに帳簿を備え、工事に関する記録や添付書類を保存する義務があります。

帳簿には、注文者との請負契約、工事名、工事場所、契約日、完成検査日、引渡日、下請契約に関する事項などを記載します。

また、契約書やその写し、支払関係資料、施工体制台帳の必要部分などを添付書類として保存する必要があります。

保存期間は原則5年間ですが、発注者と締結した新築住宅工事に関するものや営業に関する図書など、10年間の保存が必要となるものもあります。

帳簿保存義務は、行政対応のためだけではありません。

契約トラブル、元請からの確認、経営事項審査、更新申請、社内の実績管理など、さまざまな場面で重要になります。

建設業許可を適切に維持し、会社を守るためにも、工事ごとの資料を日頃から整理し、保存期間を意識した管理体制を整えておきましょう。

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