建設業許可の役員変更届について解説します。取締役・代表取締役・顧問・相談役・株主等に変更があった場合の提出期限、必要書類、登記との違い、経管変更が絡む場合の注意点までわかりやすく説明します。
建設業許可の役員変更届とは
建設業許可の役員変更届とは、建設業許可を受けている法人の役員等に変更があった場合に、許可行政庁へ提出する変更届です。
建設業許可業者は、許可を取得した後も、会社情報や許可要件に関係する事項に変更があった場合、決められた期限内に届出を行う必要があります。
役員変更も、その代表的な手続きの一つです。
たとえば、取締役が新しく就任した場合、取締役が退任した場合、代表取締役が変わった場合、役員の氏名が変わった場合などには、建設業許可上の役員変更届が必要になります。
また、建設業許可でいう「役員等」は、会社法上の取締役だけを指すとは限りません。
顧問、相談役、一定割合以上の議決権を有する株主等も、建設業許可上の届出対象となる場合があります。
そのため、単に登記簿に載っている取締役だけを確認すればよいとは限りません。
ここで重要なのは、役員変更届は建設業許可を維持するための管理手続きだという点です。
役員の就任・退任は、会社内部では通常の人事や登記手続きとして処理されることがあります。
しかし、建設業許可業者の場合は、法務局での登記変更とは別に、建設業許可上の変更届が必要になります。
役員変更届を出し忘れると、更新申請や業種追加申請の際に問題になることがあります。
建設業許可を持っている会社では、役員変更が発生した時点で、登記だけでなく建設業許可の届出も確認することが重要です。
登記変更だけでは建設業許可の変更は完了しない
役員変更で特に多い誤解が、法務局で役員変更登記をすれば、建設業許可上の変更も自動的に完了すると考えてしまうことです。
しかし、登記変更と建設業許可の変更届は別の手続きです。
法務局で役員変更登記を行っても、その情報が建設業許可の許可行政庁に自動的に反映されるわけではありません。
建設業許可業者は、建設業許可上の変更届を別途提出する必要があります。
たとえば、取締役が新しく就任した場合、法務局で登記を行います。
しかし、それだけでは建設業許可上の役員情報は更新されません。
建設業許可の変更届を提出し、許可行政庁へ新しい役員情報を届け出る必要があります。
この点を知らずに放置していると、更新申請の際に登記事項証明書と過去の届出内容が一致しないことがあります。
その結果、更新申請の前に、過去の役員変更届を整理しなければならなくなります。
また、代表者変更の場合はさらに注意が必要です。
代表取締役が変わる場合、単なる役員変更にとどまらず、常勤役員等、いわゆる旧・経営業務の管理責任者の要件に影響することがあります。
登記上は代表者変更が完了していても、建設業許可上の常勤役員等の要件を満たしていなければ、許可維持に問題が生じる可能性があります。
建設業許可業者は、役員変更登記をしたら終わりではありません。
登記完了後、または変更事実が発生した時点で、建設業許可上の届出が必要か確認しましょう。
役員変更届が必要になるケース
建設業許可の役員変更届が必要になるケースは、取締役の就任・退任だけではありません。
建設業許可上の「役員等」に変更があった場合には、届出が必要になる可能性があります。
代表的なケースは、取締役が新たに就任した場合です。
新任役員については、欠格要件に該当しないかを確認する必要があります。
そのため、略歴や証明書類の提出が必要になることがあります。
次に、役員が退任した場合です。
退任だけであっても、建設業許可上の役員情報が変わるため、変更届が必要になります。
また、代表者が変わった場合も届出が必要です。
代表取締役の変更は、単なる役員変更としてだけでなく、常勤役員等の要件に影響することがあるため、特に慎重に確認する必要があります。
役員の氏名変更も対象です。
結婚、離婚、改名などにより役員の氏名が変わった場合にも、届出が必要になります。
さらに、顧問・相談役・一定割合以上の株主等に変更があった場合も、建設業許可上の届出対象になる場合があります。
建設業許可で注意すべき役員変更の例は、次のとおりです。
・取締役が新たに就任した
・取締役が退任した
・代表取締役が変更された
・役員が常勤から非常勤になった
・役員が非常勤から常勤になった
・役員の氏名が変わった
・顧問や相談役が就任・退任した
・一定割合以上の議決権を持つ個人株主等に変更があった
・事業承継により役員構成が変わった
役員変更届が必要かどうかは、会社法上の登記だけでなく、建設業許可上の届出対象に該当するかで判断する必要があります。
提出期限は原則として事実発生後30日以内
建設業許可の役員変更届は、原則として事実発生後30日以内に提出する必要があります。
ここでいう事実発生とは、実際に役員変更が生じた日を指します。
たとえば、株主総会や取締役会で役員の就任・退任が決まった日、代表者変更の効力が生じた日、氏名変更があった日などが問題になります。
登記が完了した日ではなく、変更の事実が発生した日を基準に考える必要がある点に注意しましょう。
実務上は、役員変更登記を済ませてから建設業許可の変更届を提出することが多くあります。
しかし、登記完了を待っているうちに30日を過ぎてしまうケースもあります。
役員変更が決まった時点で、建設業許可上の届出期限も意識しておくことが重要です。
また、代表者変更や常勤・非常勤の変更が絡む場合は注意が必要です。
単なる役員変更であれば30日以内の届出になることが多いですが、常勤役員等、いわゆる旧・経管に関係する変更の場合は、許可要件に関わる事項として2週間以内の届出が必要になる場合があります。
たとえば、常勤役員等として届け出ていた代表取締役が退任し、別の役員を後任の常勤役員等にする場合です。
この場合、通常の役員変更届だけでなく、常勤役員等の変更届が必要になります。
提出期限も短くなるため、事前確認が不可欠です。
役員変更届は、更新時にまとめて出せばよい手続きではありません。
変更が発生したら、速やかに提出期限と必要書類を確認しましょう。
常勤役員等の変更が絡む場合は要注意
役員変更届で最も注意すべきなのが、常勤役員等の変更が絡む場合です。
常勤役員等とは、以前の経営業務の管理責任者、いわゆる経管にあたる重要な要件です。
建設業許可では、法人の場合、一定の建設業経営経験等を持つ常勤役員等が必要です。
そのため、常勤役員等として届け出ていた役員が退任したり、非常勤になったり、代表者変更により別の役員へ交代したりする場合は、許可要件に影響します。
この場合、単なる役員変更届だけでは足りません。
後任者が常勤役員等の要件を満たしているかを確認し、必要な変更届を提出する必要があります。
ここを見落とすと、建設業許可の維持に大きな問題が生じる可能性があります。
たとえば、先代社長が常勤役員等として建設業許可を維持していた会社で、先代社長が退任し、息子が代表取締役に就任するケースがあります。
このとき、後任の息子に必要な建設業経営経験がない場合、常勤役員等の要件を満たせない可能性があります。
登記上は代表者変更ができても、建設業許可上はそのまま維持できるとは限りません。
また、役員が常勤から非常勤になる場合も注意が必要です。
常勤役員等として届け出ていた人が非常勤になると、常勤性を満たさなくなる可能性があります。
役員変更がある場合は、その役員が常勤役員等として届け出ている人かどうかを必ず確認しましょう。
該当する場合は、後任者の経験年数、役員歴、常勤性、社会保険関係資料などを早めに確認する必要があります。
役員変更届の必要書類
役員変更届で必要になる書類は、就任、退任、代表者変更、氏名変更、顧問・相談役・株主等の変更など、変更内容によって異なります。
一般的には、変更届出書、役員等の一覧表、誓約書、許可申請者の住所・生年月日等に関する調書、登記事項証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書などが関係します。
新しく役員が就任する場合は、欠格要件に該当しないことを確認するための書類が必要になります。
具体的には、誓約書、役員等の調書、身分証明書、登記されていないことの証明書などが必要になることがあります。
身分証明書は、本籍地の市区町村で取得する証明書です。
運転免許証やマイナンバーカードのような本人確認書類とは異なります。
登記されていないことの証明書は、法務局で取得する証明書です。
退任の場合は、新任役員ほど多くの証明書が不要なこともありますが、登記事項証明書などで退任の事実を確認する必要があります。
代表者変更の場合は、登記事項証明書に加え、必要に応じて常勤役員等の確認資料が必要になることがあります。
氏名変更の場合は、変更の事実が分かる資料が必要になることがあります。
役員変更届で準備する書類の例は次のとおりです。
・変更届出書
・役員等の一覧表
・誓約書
・許可申請者の住所、生年月日等に関する調書
・履歴事項全部証明書
・身分証明書
・登記されていないことの証明書
・新任役員の略歴・経歴に関する資料
・代表者変更がある場合の関連書類
・常勤役員等に関係する場合の確認資料
・委任状
実際に必要な書類は、提出先や変更内容によって異なります。
役員が就任するのか、退任するのか、代表者変更なのか、常勤役員等にも関係するのかを整理してから準備しましょう。
新任役員がいる場合の確認ポイント
役員変更届で新任役員がいる場合は、欠格要件に該当しないかを確認する必要があります。
建設業許可では、法人の役員等が一定の欠格要件に該当する場合、許可を受けられない、または許可維持に影響する可能性があります。
そのため、新しく役員になる人については、単に登記されているかどうかだけでなく、建設業許可上問題がないかを確認します。
新任役員について確認すべき主なポイントは、過去に建設業許可の取消しや処分に関係していないか、一定の犯罪歴や法令違反がないか、破産等に関する問題がないかなどです。
これらを確認するために、誓約書、身分証明書、登記されていないことの証明書、住所・生年月日等に関する調書などを提出します。
また、新任役員が常勤役員等の後任者になる場合は、さらに経営経験や常勤性の確認が必要です。
通常の役員就任よりも確認事項が増えます。
建設業の経営経験があるか、どの会社で何年間役員だったか、申請会社に常勤しているか、他社勤務や他社役員との兼務がないかを確認する必要があります。
新任役員の中に外国籍の方がいる場合や、住所・本籍地の確認に時間がかかる場合も、書類取得に余裕を持つ必要があります。
身分証明書は本籍地で取得するため、本籍地が遠方の場合は郵送取得に日数がかかることがあります。
新任役員がいる場合は、登記完了後に慌てて書類を集めるのではなく、役員就任が決まった段階で建設業許可上の必要書類を確認しておくことが大切です。
代表者変更の場合の注意点
代表者変更は、役員変更届の中でも特に注意が必要です。
代表取締役が変わる場合、建設業許可上の代表者情報も変更する必要があります。
しかし、代表者変更で重要なのは、代表者名を変更するだけではありません。
新しい代表者が常勤役員等としても届け出られるのか、または別の役員を常勤役員等として維持するのかを確認する必要があります。
建設業許可では、法人に一定の建設業経営経験等を持つ常勤役員等が必要です。
代表者変更によって、常勤役員等として届け出ていた人が退任する場合は、後任者の要件確認が必要になります。
たとえば、父が代表取締役兼常勤役員等として許可を維持していた会社で、子が代表取締役に就任する場合です。
子が十分な建設業経営経験を持っていれば問題になりにくいですが、経験年数が不足している場合は、常勤役員等の要件を満たせない可能性があります。
このようなケースでは、先代代表者を一定期間役員として残す、後任者の経験年数が足りるまで体制を整えるなど、事前の検討が必要になることがあります。
代表者変更は、会社法上の登記、税務、金融機関、取引先対応など、さまざまな手続きが発生します。
その中で建設業許可の確認が後回しになることがあります。
しかし、建設業許可業者にとって、代表者変更は許可維持に関わる重要事項です。
代表者変更を予定している場合は、登記を行う前に、建設業許可上の常勤役員等の要件に影響しないかを確認することをおすすめします。
役員変更届を出し忘れた場合のリスク
役員変更届を出し忘れると、建設業許可の管理上さまざまなリスクが生じます。
まず、更新申請時に問題になる可能性があります。
更新申請では、現在の登記事項証明書や過去の届出内容を確認します。
その際、登記上の役員情報と、建設業許可上の届出情報が一致していないと、過去の役員変更届を提出する必要が出てきます。
更新期限が近い状態で届出漏れが発覚すると、更新申請の準備が非常に慌ただしくなります。
次に、業種追加申請や許可換え申請でも問題になることがあります。
新たな申請を行う際には、現在の許可情報が正しく整理されている必要があります。
役員変更届が漏れていると、申請前に過去分を整理しなければならないことがあります。
また、代表者変更や常勤・非常勤の変更が常勤役員等に関係していた場合、単なる届出漏れでは済まないことがあります。
常勤役員等の要件を満たしていない期間があったと判断されると、許可維持に関わる重大な問題になる可能性があります。
さらに、元請や取引先から許可情報を確認された場合にも影響があります。
登記情報と許可情報が一致していないと、許可管理が不十分な会社と見られる可能性があります。
建設業許可は、会社の信用に関わる許可です。
役員変更届の出し忘れは、すぐに表面化しないこともありますが、更新時や取引先確認時に問題化することがあります。
役員変更があった場合は、登記手続きとセットで建設業許可の変更届も確認しましょう。
まとめ
建設業許可の役員変更届とは、建設業許可を受けている法人の役員等に変更があった場合に提出する変更届です。
取締役の就任・退任、代表者変更、氏名変更、常勤・非常勤の変更、顧問・相談役・一定割合以上の株主等の変更があった場合には、届出が必要になることがあります。
役員変更で最も注意すべきなのは、法務局で登記変更をしただけでは、建設業許可上の変更は完了しないという点です。
登記変更と建設業許可の変更届は別の手続きです。
役員変更届の提出期限は、原則として事実発生後30日以内です。
ただし、常勤役員等、いわゆる旧・経営業務の管理責任者に関係する変更の場合は、許可要件に関わるため、2週間以内の届出が必要になることがあります。
代表者変更や事業承継では、特に注意が必要です。
必要書類としては、変更届出書、役員等の一覧表、誓約書、許可申請者の住所・生年月日等に関する調書、履歴事項全部証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書などが関係します。
新任役員がいる場合は、欠格要件に該当しないかを確認するための書類が必要になります。
代表者変更や常勤役員等の変更が絡む場合は、経営経験や常勤性の確認資料が必要になることもあります。
役員変更届を出し忘れると、更新申請や業種追加申請の際に問題になります。
また、登記情報と建設業許可上の情報が一致しない状態は、許可管理上好ましくありません。
建設業許可を安定して維持するためには、役員変更が発生した時点で、登記だけでなく建設業許可上の変更届も確認し、期限内に提出することが大切です。
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