建設業許可の本店移転届について解説します。会社の本店所在地を変更した場合の提出期限、必要書類、登記変更との関係、営業所移転との違い、営業所写真・使用権限資料・許可票修正の注意点までわかりやすく説明します。
建設業許可の本店移転届とは
建設業許可の本店移転届とは、建設業許可を受けている法人が、本店所在地を変更した場合に、許可行政庁へ提出する変更届です。
法人の本店所在地は、法務局の登記事項として管理されています。
会社が本店を移転した場合、まず法務局で本店移転登記を行う必要があります。
しかし、登記を変更しただけでは、建設業許可上の所在地情報は自動的には変わりません。
建設業許可業者の場合は、建設業許可上の変更届も別途提出する必要があります。
ここで重要なのは、本店所在地の変更が、建設業許可上の「主たる営業所」の移転を伴うのかどうかです。
建設業許可では、営業所が非常に重要な意味を持ちます。
建設業における営業所とは、単なる住所や登記上の所在地ではなく、建設工事の請負契約に関する見積り、入札、契約締結などを行う実体のある事務所です。
そのため、本店移転届では、単に住所が変わったことを届け出るだけではなく、新しい所在地が建設業許可上の営業所として問題ないかを確認する必要があります。
特に、本店と主たる営業所が同じ会社では、本店移転により建設業許可上の主たる営業所も変わることになります。
この場合、営業所写真、使用権限資料、電話・机・書類保管場所など、営業所としての実態確認が必要になることがあります。
本店移転は、会社の登記上はよくある手続きですが、建設業許可業者にとっては許可管理上も重要な変更です。
登記上の本店移転と建設業許可上の営業所移転は別に考える
本店移転でまず整理すべきなのは、登記上の本店所在地と、建設業許可上の営業所所在地を分けて考えることです。
多くの中小建設会社では、登記上の本店と建設業許可上の主たる営業所が同じ場所になっています。
この場合、本店を移転すれば、建設業許可上の主たる営業所も移転することになります。
そのため、営業所所在地の変更届として対応する必要があります。
一方で、会社によっては、登記上の本店と実際の建設業の営業所が異なる場合があります。
たとえば、登記上の本店は代表者自宅に置き、実際の建設業の営業活動は別の事務所で行っているケースです。
このような場合、登記上の本店だけを移転するのか、建設業許可上の営業所も移転するのかを確認しなければなりません。
登記上の本店だけが変わり、建設業許可上の営業所が変わらない場合でも、登記事項証明書の内容が変わるため、建設業許可上の届出が必要になることがあります。
一方、建設業許可上の主たる営業所を移転する場合は、営業所の実態確認が重要になります。
単なる登記情報の変更よりも、確認すべき資料が増える可能性があります。
本店移転の相談では、
「登記上の本店だけを移すのか」
「建設業許可上の主たる営業所も移すのか」
「従たる営業所の所在地も変わるのか」
「営業所の新設・廃止を伴うのか」
を最初に整理することが大切です。
ここを曖昧にしたまま手続きを進めると、必要書類や届出内容を誤る可能性があります。
本店移転届が必要になるケース
建設業許可の本店移転届が必要になる代表的なケースは、法人の本店所在地を変更した場合です。
たとえば、名古屋市中区から名古屋市東区へ本店を移転する場合や、同じ市内でビルの別住所へ移転する場合です。
この場合、法務局で本店移転登記を行い、その後、建設業許可上の変更届を提出します。
また、登記上の本店と建設業許可上の主たる営業所が同じ場合は、本店移転により主たる営業所も移転することになります。
この場合、営業所所在地の変更として、営業所要件の確認が必要になることがあります。
本店移転届が必要になりやすいケースとしては、次のようなものがあります。
・法人の本店所在地を変更した
・登記上の本店と建設業許可上の主たる営業所を同時に移転した
・自宅兼事務所から賃貸事務所へ移転した
・賃貸事務所から自社所有物件へ移転した
・同じビル内で部屋番号や使用区画が変わった
・市区町村をまたいで本店を移転した
・県外へ本店または主たる営業所を移転した
・本店移転と同時に営業所を追加・廃止した
・電話番号や営業所の使用範囲が変わった
特に注意が必要なのは、住所表記だけが変わるケースです。
区画整理、住居表示変更、ビル名変更、部屋番号変更などにより、実際には移転していなくても所在地表記が変わる場合があります。
このような場合でも、建設業許可上の所在地情報に影響する可能性があるため、届出が必要か確認する必要があります。
また、本店移転と同時に代表者変更、役員変更、商号変更、資本金変更を行う場合は、それぞれの変更届も必要になることがあります。
本店移転だけでなく、登記事項証明書全体を確認して、他の変更がないかを確認することが重要です。
提出期限は原則として事実発生後30日以内
建設業許可の本店移転届は、原則として事実発生後30日以内に提出する必要があります。
愛知県では、既存の営業所の所在地変更は、事実発生後30日以内の届出事項として案内されています。
ここでいう事実発生とは、実際に所在地が変更された日を指します。
登記が完了した日ではなく、会社として本店移転の効力が生じた日や、営業所としての所在地が変わった日が問題になることがあります。
実務上は、本店移転登記が完了した後に履歴事項全部証明書を取得し、建設業許可の変更届に添付する流れになることが多いです。
しかし、登記完了を待ってから建設業許可の準備を始めると、30日以内の期限に余裕がなくなる場合があります。
特に、管轄法務局が変わる本店移転や、他の登記事項変更を同時に行う場合は、登記完了まで時間がかかることがあります。
そのため、本店移転を予定している段階で、建設業許可上の届出も必要になることを前提に準備しておくべきです。
また、本店移転により建設業許可上の主たる営業所も移転する場合は、営業所写真や使用権限資料などの準備も必要になります。
これらは移転後でなければ準備できないものもありますが、事前に撮影項目や必要資料を確認しておけば、移転後すぐに対応できます。
本店移転届は、更新申請のときにまとめて提出する手続きではありません。
移転が発生した時点で、期限内に届出を行う必要があります。
本店移転届の必要書類
本店移転届で必要になる書類は、移転内容や許可行政庁の取扱いによって異なります。
一般的には、変更届出書、履歴事項全部証明書、営業所一覧表、営業所写真、賃貸借契約書や使用承諾書などの使用権限資料が関係します。
まず必要になるのが、変更届出書です。
変更前の所在地、変更後の所在地、変更年月日、許可番号、商号などを正確に記載します。
法人の場合は、履歴事項全部証明書が必要になります。
本店移転登記が完了していることを確認するためです。
履歴事項全部証明書には、移転前の本店、移転後の本店、移転日などが記載されます。
また、本店と建設業許可上の営業所が同じ場合は、営業所所在地の変更資料も必要になります。
営業所の写真、事務所の使用権限を示す資料、電話や机など営業所としての実態を示す資料が求められることがあります。
賃貸物件の場合は、賃貸借契約書の写しが関係します。
代表者個人所有の物件を法人が使用する場合は、使用承諾書が必要になることがあります。
自社所有物件の場合は、不動産登記事項証明書や固定資産関係資料などが関係することがあります。
本店移転届で必要になりやすい書類は次のとおりです。
・変更届出書
・履歴事項全部証明書
・営業所一覧表
・営業所写真
・賃貸借契約書の写し
・使用承諾書
・不動産登記事項証明書
・営業所の平面図や使用区画が分かる資料
・電話番号等の確認資料
・提出票
・委任状
・正本・副本
・返信用封筒またはレターパック
実際に必要な書類は、登記上の本店だけが変わるのか、建設業許可上の営業所も移転するのかによって変わります。
提出前に、移転内容を整理し、最新の手引きに沿って準備しましょう。
営業所要件の確認が必要になる場合
本店移転で特に重要なのが、営業所要件の確認です。
建設業許可における営業所とは、建設工事の請負契約に関する見積り、入札、契約締結などを行う事務所です。
単なる倉庫、資材置場、現場事務所、郵便物の受け取り場所だけでは足りません。
営業所としての実態が必要です。
本店移転により建設業許可上の主たる営業所も移転する場合、新しい所在地が営業所として認められるかを確認する必要があります。
特に注意が必要なのは、自宅兼事務所、バーチャルオフィス、レンタルオフィス、他社との共用事務所、住居用賃貸物件などです。
自宅兼事務所の場合は、居住スペースと事務スペースが区別されているか、建設業の営業活動を行う場所として使えるかを確認する必要があります。
賃貸物件の場合は、賃貸借契約書上の使用目的が事務所利用に対応しているかが問題になることがあります。
住居専用契約の場合、事業利用が可能かを確認する必要があります。
他社と同じ場所を使う場合は、営業所としての独立性も重要です。
机、電話、書類保管場所、看板、郵便受け、来客対応スペースなどが区分されているかを説明できるようにしておく必要があります。
営業所写真では、外観、入口、郵便受け、事務スペース、机、電話、帳簿・書類保管場所、許可票掲示予定場所などを撮影することがあります。
写真が不足していると、補正や再撮影になる可能性があります。
本店移転は、所在地を変えるだけのように見えますが、建設業許可上は営業所要件の再確認が必要になることがあります。
移転先を契約する前に、建設業許可の営業所として問題がないか確認しておくと安心です。
県外移転・大臣許可への影響に注意する
本店移転で特に注意が必要なのが、県外への移転や、営業所の配置が変わるケースです。
愛知県知事許可は、愛知県内にのみ営業所を置く場合の許可です。
もし主たる営業所を愛知県外へ移転する場合、単なる本店移転届では済まない可能性があります。
たとえば、愛知県知事許可の会社が、主たる営業所を岐阜県や三重県へ移転する場合です。
この場合、許可行政庁が変わるため、許可換え新規申請が必要になる可能性があります。
また、愛知県内に主たる営業所を残しつつ、別の都道府県にも営業所を設ける場合は、大臣許可が関係する可能性があります。
建設業許可では、営業所が一つの都道府県内だけにあるのか、複数の都道府県にまたがるのかによって、知事許可と大臣許可の区分が変わります。
そのため、本店移転や営業所移転により、都道府県をまたぐ営業所配置になる場合は、事前確認が非常に重要です。
また、県内移転であっても、主たる営業所の管轄が変わる場合があります。
名古屋市内の主たる営業所と、名古屋市外の主たる営業所では、提出先が異なる場合があります。
本店移転により提出先や管轄が変わるかどうかも確認しておきましょう。
営業所の移転は、会社の住所変更だけではなく、許可区分や提出先にも影響することがあります。
特に県外移転、複数営業所化、営業所の新設・廃止を伴う場合は、移転前に許可行政庁または専門家へ確認することをおすすめします。
許可票・ホームページ・元請提出書類の修正
本店移転届を提出した後は、対外表示の修正も必要です。
建設業許可業者は、営業所に建設業許可票を掲示する必要があります。
いわゆる金看板です。
許可票には、商号、代表者名、許可番号、許可を受けた建設業の種類、営業所所在地などが記載されます。
本店移転により営業所所在地が変わった場合は、許可票の所在地表示も修正する必要があります。
旧所在地のまま掲示していると、現在の許可情報と一致しない状態になります。
また、ホームページ、名刺、会社案内、パンフレット、チラシ、見積書、請求書、契約書ひな形、メール署名、Googleビジネスプロフィールなども確認しましょう。
建設業許可番号を掲載している場合、所在地情報も併記していることが多いため、旧住所が残りやすいです。
特にホームページでは、会社概要、フッター、お問い合わせページ、プライバシーポリシー、特定商取引法表記、採用ページなどに旧所在地が残ることがあります。
元請や取引先への連絡も重要です。
協力会社登録をしている場合、元請のシステム上の会社住所を変更してもらう必要があります。
元請によっては、履歴事項全部証明書、建設業許可変更届の副本、許可証明書、振込口座情報、請求書送付先情報などの提出を求めることがあります。
金融機関、保険会社、リース会社、税理士、社会保険労務士、行政書士、労働保険事務組合などにも住所変更連絡が必要になる場合があります。
本店移転は、届出を出して終わりではありません。
許可票、広告表示、契約書、請求書、元請登録情報まで整えることで、対外的な信用を維持しやすくなります。
本店移転届を出し忘れた場合のリスク
本店移転届を出し忘れると、建設業許可の管理上さまざまな問題が生じます。
まず、登記事項証明書上の本店所在地と、建設業許可上の所在地情報が一致しない状態になります。
この状態は、更新申請や業種追加申請の際に発覚しやすいです。
更新申請では、登記事項証明書や過去の届出内容を確認します。
その際、登記上は移転後の所在地になっているのに、建設業許可上は旧所在地のままだと、過去の本店移転届が未提出であることが分かります。
この場合、更新申請の前に本店移転届を整理する必要が出てきます。
更新期限が近い状態で発覚すると、書類準備や補正対応が慌ただしくなります。
次に、元請や取引先からの信用面の問題があります。
登記情報、建設業許可情報、ホームページ、請求書、契約書の所在地が一致していないと、会社管理が不十分に見える可能性があります。
元請が協力会社情報を確認した際に、許可上の所在地が旧住所のままだと、追加確認を求められることがあります。
また、営業所移転を伴っている場合、営業所要件に問題が出る可能性もあります。
許可行政庁に届け出ている営業所とは別の場所で実際に営業している状態は、許可管理上好ましくありません。
営業所技術者等の常勤性や営業所の実態確認にも影響することがあります。
さらに、県外移転や複数都道府県での営業所設置が絡む場合は、知事許可・大臣許可の区分にも影響する可能性があります。
本店移転届は、単なる住所変更の届出に見えますが、建設業許可を正しく維持するために重要です。
移転後は速やかに届出を行い、許可情報と実際の会社情報を一致させておきましょう。
まとめ
建設業許可の本店移転届とは、建設業許可を受けている法人が本店所在地を変更した場合に提出する変更届です。
法務局で本店移転登記をしただけでは、建設業許可上の所在地情報は自動的に変わりません。
建設業許可業者は、登記変更とは別に、許可行政庁へ本店移転・営業所所在地変更の届出を行う必要があります。
提出期限は、原則として事実発生後30日以内です。
登記完了日ではなく、実際に本店移転や営業所移転の効力が生じた日を意識して、期限内に対応することが大切です。
本店移転届で必要になる書類としては、変更届出書、履歴事項全部証明書、営業所一覧表、営業所写真、賃貸借契約書、使用承諾書、提出票、委任状などが考えられます。
ただし、必要書類は、登記上の本店だけが変わるのか、建設業許可上の主たる営業所も移転するのかによって変わります。
本店と主たる営業所が同じ会社では、本店移転により営業所要件の確認が必要になることがあります。
自宅兼事務所、賃貸物件、他社との共用事務所、レンタルオフィスなどへ移転する場合は、営業所としての実態や使用権限を説明できるか確認しましょう。
また、県外移転や複数都道府県に営業所を置くことになる場合は、許可換え新規申請や大臣許可への影響が出る可能性があります。
本店移転後は、建設業許可票、ホームページ、名刺、会社案内、請求書、契約書、Googleビジネスプロフィール、元請の協力会社登録情報なども修正する必要があります。
本店移転届を出し忘れると、更新申請や業種追加申請の際に問題になるだけでなく、取引先からの信用にも影響する可能性があります。
建設業許可業者が本店を移転する場合は、登記手続きと建設業許可の変更届をセットで考え、移転前から必要書類とスケジュールを確認しておくことが重要です。
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