退職届・退職通知書を内容証明郵便で送る際の正しい書き方を行政書士が解説します。退職意思、退職日、有給休暇、貸与品、必要書類、連絡方法の記載例、内容証明の形式、間違いやすい表現までわかりやすく説明します。
退職届を内容証明で送るときに大切なこと
退職届や退職通知書を内容証明郵便で送りたいと思っても、何を書けばよいのか分からず、不安になる方は少なくありません。
「退職します」と書くだけでよいのか。
退職日はどのように決めればよいのか。
有給休暇や貸与品についても書くべきなのか。
会社から電話が来ないようにするには、どのような文言を入れればよいのか。
内容証明は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰宛てに差し出したかを記録として残す制度です。
そのため、退職の場面で利用する場合は、退職意思と退職日を中心に、退職手続きに必要な事項を過不足なく記載することが重要です。
文章を長くする必要はありません。
むしろ、会社への不満や退職に至った経緯を細かく書くよりも、退職意思、退職日、有給休暇、貸与品、退職書類、今後の連絡方法を簡潔に整理した方が、退職通知として分かりやすくなります。
なお、退職意思がすでに固まっている場合は、「退職願」ではなく「退職届」または「退職通知書」として作成する方が、通知の目的を明確にしやすくなります。
書き始める前に確認すること
退職内容証明を書き始める前に、次の点を確認しましょう。
雇用契約に期間の定めがあるか
正社員など期間の定めのない雇用契約と、契約社員など期間の定めがある雇用契約では、退職日の考え方が異なることがあります。
期間の定めのない雇用契約では、民法上、解約の申入れから2週間が経過することで雇用契約が終了するという考え方が基本になります。
一方、雇用契約に期間の定めがある場合は、契約期間や現在の事情を確認したうえで文面を作る必要があります。
退職希望日はいつか
退職日を具体的な日付で記載するのか、本書面の到達から一定期間が経過した日とするのかを決めます。
内容証明では、発送日と会社への到達日が同じとは限りません。
そのため、退職日を決めるときは、会社へ文書が届く時期も考慮する必要があります。
有給休暇が何日残っているか
退職日まで有給休暇を取得したい場合は、有給残日数と退職日までの所定労働日数を確認します。
土日祝日などの所定休日には、通常、有給休暇を使用しません。
単純なカレンダーの日数ではなく、実際に出勤する予定だった日が何日あるかを確認することが大切です。
宛名・差出人・作成日の書き方
退職内容証明には、誰から誰に対する通知なのかを明確に記載します。
会社の名称は、「株式会社」を省略せず、登記上または正式に使用されている名称で記載します。
宛名は、次のような形が一般的です。
株式会社○○
代表取締役 ○○○○ 殿
送付先は、会社の本店所在地や、退職手続きを担当する本社・人事部などが考えられます。
勤務先と本店所在地が異なる場合もあるため、どこへ送るのが適切かを事前に確認しましょう。
差出人についても、住所と氏名を正確に記載します。
〒○○○-○○○○
愛知県○○市○○町○丁目○番○号
通知人 ○○○○
内容証明本文に記載する住所氏名と、封筒に記載する差出人・受取人は一致させておくことが基本です。
作成日または通知日についても、実際の発送日との関係を確認して記載します。
すでに経過した日付や、発送予定と大きく異なる日付を記載しないよう注意しましょう。
退職意思と退職日の書き方
退職内容証明で最も重要なのは、退職する意思を明確に記載することです。
「退職したいと考えています」
「できれば退職させてください」
「退職を希望します」
このような表現では、退職の相談やお願いとして受け取られる可能性があります。
退職意思が固まっている場合は、次のように記載します。
私は、貴社との間の雇用契約について、令和○年○月○日をもって退職する意思を通知いたします。
または、次のような書き方も考えられます。
私は、本書面をもって、貴社との間の雇用契約を解約する意思を通知いたします。
退職日については、具体的な日付を記載する方法があります。
退職日は、令和○年○月○日といたします。
期間の定めのない雇用契約で、会社への到達日を基準にする場合は、次のような書き方もあります。
本書面が貴社に到達した日から2週間を経過した日をもって退職いたします。
どちらの書き方が適しているかは、退職希望日、発送予定日、有給休暇、雇用契約の内容などによって変わります。
重要なのは、退職日を曖昧にせず、会社が文面を読んだときに退職日を判断できる状態にすることです。
有給休暇を取得する場合の書き方
退職日まで有給休暇を取得したい場合は、その意思も明確に記載します。
基本的な文言としては、次のような形が考えられます。
本書面到達日の翌日から退職日までの所定労働日について、残存する年次有給休暇を取得いたします。
取得期間を具体的に決めている場合は、次のように記載することもできます。
令和○年○月○日から退職日までの所定労働日について、残存する年次有給休暇を取得いたします。
「有給を消化したいと思います」「有給を使わせてください」という表現よりも、取得する意思を明確に示す方が、希望内容が伝わりやすくなります。
ただし、有給残日数が分からない状態で、実際の残日数を超える日数を断定して記載すると、会社との確認が必要になることがあります。
有給休暇だけでは退職日までの日数が足りない場合は、退職日を調整するのか、不足期間について別の扱いを求めるのかも整理しておきましょう。
貸与品・退職書類・連絡方法の書き方
会社に行かずに退職手続きを進める場合は、貸与品の返却方法も記載しておくと、発送後の連絡を減らしやすくなります。
会社から貸与を受けている物品については、追跡可能な方法により郵送にて返却いたします。
返却先の指定が必要な場合は、次のように記載します。
返却先または返却方法の指定がある場合は、書面またはメールにてお知らせください。
離職票や源泉徴収票などの退職関係書類についても、送付を依頼できます。
離職票、源泉徴収票その他退職に伴い必要となる書類については、準備が整い次第、下記住所宛てにご郵送ください。
会社からの電話や面談を避けたい場合は、今後の連絡方法も記載します。
今後の退職手続きに関するご連絡は、記録保持および行き違い防止のため、書面またはメールにてお願いいたします。
会社からの連絡をすべて拒否するのではなく、必要な事務連絡の受け取り方法を明確にするのがポイントです。
退職届を内容証明で送る場合の文例
ここまでの内容を簡潔にまとめると、次のような文面になります。
通知書
私は、貴社との間の雇用契約について、令和○年○月○日をもって退職する意思を通知いたします。
本書面到達日の翌日から退職日までの所定労働日については、残存する年次有給休暇を取得いたします。
会社から貸与を受けている物品については、追跡可能な方法により郵送にて返却いたします。
離職票、源泉徴収票その他退職に伴い必要となる書類については、準備が整い次第、下記住所宛てにご郵送ください。
今後の退職手続きに関するご連絡は、記録保持および行き違い防止のため、書面またはメールにてお願いいたします。
以上
これは基本的な構成例です。
退職日、有給休暇、貸与品、必要書類、連絡方法は、一人ひとりの状況に合わせて調整する必要があります。
状況別の完成文例を確認したい場合は、別記事の「退職届の内容証明テンプレート|書き方・例文・送り方を解説」も参考にしてください。
間違いやすい書き方と注意点
退職内容証明を自分で作る場合は、次のような書き方に注意しましょう。
退職意思がお願いになっている
「退職させてください」という文言では、会社の承諾を求める書き方になります。
退職意思が固まっている場合は、「退職する意思を通知します」と明確に記載します。
退職日が会社への到達前になっている
内容証明は、発送した瞬間に会社へ届くわけではありません。
発送予定日と到達見込みを確認し、すでに過ぎてしまう日付を退職日に設定しないよう注意しましょう。
有給残日数と取得期間が合っていない
有給休暇を使用するのは、原則として退職日までの所定労働日です。
有給残日数と所定労働日数を確認せずに、期間中のすべての日を有給として記載しないようにしましょう。
会社への不満を長く書いている
上司への不満、過去の出来事、会社に対する反論を長く記載すると、退職意思や退職日が埋もれてしまいます。
退職通知の目的は、会社を責めることではなく、退職に必要な事項を明確に伝えることです。
強すぎる警告文を入れている
最初から「法的措置を取ります」「一切連絡を禁止します」といった強い表現を入れると、会社側の反発を招く可能性があります。
必要な事務連絡の方法を指定し、手続きを進めやすい文面に整えることが大切です。
内容証明郵便として差し出す際の形式
郵便局の窓口から内容証明を差し出す場合は、受取人へ送る内容文書のほか、差出人と郵便局が保管する謄本を準備します。
謄本には字数・行数の制限があり、横書きの場合は、次のいずれかの形式で作成します。
- 1行20字以内・1枚26行以内
- 1行13字以内・1枚40行以内
- 1行26字以内・1枚20行以内
内容証明は一般書留として差し出す必要があり、すべての郵便局で取り扱っているわけではありません。
窓口から送る場合は、事前に取扱郵便局を確認しておくと安心です。
インターネットから発送できるe内容証明を利用する方法もあります。
e内容証明では、作成したWordファイルをアップロードし、日本郵便による印刷・照合・封入を経て発送されます。
また、内容証明だけでは、会社へ配達された事実までは証明されません。
会社への到達を確認しやすくするため、退職通知では配達証明を付ける方法があります。
なお、内容証明郵便には、貸与品や健康保険証、返信用封筒などを同封できません。
退職通知は内容証明で送り、貸与品等は別便で返却しましょう。
行政書士に退職通知書の作成を依頼する場合
退職内容証明は、自分で作成して発送することもできます。
ただし、実際には文章の書き方だけでなく、次の事項を一体として整理する必要があります。
- 雇用契約に期間の定めがあるか
- 退職日をいつにするか
- 会社への到達日をどう見込むか
- 有給休暇が何日残っているか
- 退職日まで出社するのか
- 貸与品をどのように返却するか
- どの退職書類を送ってもらうか
- 今後の連絡方法をどう指定するか
行政書士に依頼することで、現在の勤務状況や退職希望日を確認したうえで、必要な事項を退職通知書として整理できます。
会社への不満を並べるのではなく、退職意思、退職日、有給休暇、貸与品、必要書類、連絡方法が明確に伝わる文面を作成します。
「自分で文面を作ったが、このまま送ってよいか不安」
「退職日と有給休暇の書き方が分からない」
「会社と直接話さずに退職手続きを進めたい」
このような段階でもご相談いただけます。
内容証明を発送してから修正することは難しいため、不安がある場合は、会社へ送る前に文面と退職日を整理しておくことが大切です。
まとめ
退職届や退職通知書を内容証明で送る場合は、退職意思と退職日を明確に記載することが最も重要です。
そのうえで、必要に応じて、有給休暇、貸与品の返却、退職関係書類の送付、今後の連絡方法を記載します。
退職意思が固まっている場合は、「退職したい」「退職させてください」ではなく、「退職する意思を通知します」と明確に書きましょう。
退職日を決めるときは、雇用契約の期間、会社への到達日、有給残日数、退職日までの所定労働日数を確認する必要があります。
また、内容証明は会社を責めるための文書ではありません。
必要な事項を簡潔に整理し、会社との認識のズレを減らしながら退職手続きを進めるための文書です。
「退職内容証明の書き方が分からない」
「自分の状況に文例が合っているか不安」
「退職日や有給休暇を間違えずに通知したい」
このような場合は、内容証明を発送する前に、現在の勤務状況と退職希望日を整理しておきましょう。
退職に必要な事項を正確な文面にまとめることで、会社と直接やり取りする負担を減らし、退職手続きを進めやすくなります。
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