契約書を作成しないとどうなる？想定されるリスクと実際のトラブル事例を行政書士が解説

「口頭での約束だけで済ませてしまった」「メールやLINEのやり取りだけで大丈夫だと思った」──このようなケースで契約書を作成しなかった結果、思わぬトラブルやリスクに発展する事例が後を絶ちません。
ビジネスや個人取引において、契約書の作成は一見「手間がかかる」「面倒」と思われがちですが、契約書がないことで生じる損失やトラブルは、その何倍もの負担や損害をもたらすことがあります。
本記事では、契約書を作成しない場合の主なリスクと、実際に起こり得るトラブル事例について行政書士の視点から分かりやすく解説し、実務での注意点や予防策もあわせてご紹介します。

• 合意内容の証拠が残らない…後日、双方の認識に食い違いが出た場合に、何を約束したか証明できません。
• 「言った・言わない」の争いになりやすい…口頭や曖昧な記録だけでは、取引内容の証明が困難。
• 法的な権利保全が難しい…訴訟や紛争時、契約の存在自体が否定される恐れも。
• 第三者・社内での説明責任を果たせない…社内管理や税務調査、金融機関対応にも支障。
• 損害賠償や責任範囲が不明確…トラブル発生時、誰がどこまで責任を負うかが曖昧になる。
• 取引先との信頼関係が損なわれる…契約書を交わさないことで「信用できない取引先」と見なされ、今後のビジネスに悪影響を及ぼす場合があります。
• 法改正や業界ルールに非対応…契約書がなければ、最新の法令や業界標準への対応も不十分となり、思わぬ違法リスクにつながります。

実際、弁護士や行政書士が相談を受けるトラブルの多くが「契約書を作っていなかった」ことに起因しています。 予防法務の観点からも、必ず「書面」での契約を基本としましょう。

• 報酬・支払金額を巡るトラブル
  例）「この金額で合意したはず」「そんな話は聞いていない」と主張が食い違い、支払拒否や未収金が発生。
  ※請求書や見積書だけでは支払義務が証明できず、最悪の場合泣き寝入りになることも。
• 納期・業務範囲に関する争い
  例）成果物の内容や納品日が曖昧で、完成後に「これは契約内容と違う」とクレーム。
  ※業務委託や制作案件で特に多発。追加費用や納期遅延で揉めやすい。
• 秘密情報漏洩・不正利用
  NDA（秘密保持契約）を交わさずに情報を提供し、後日第三者に情報が漏れるトラブル。
  ※IT業界や新規事業の場面で、情報流出による損害賠償請求へ発展する例も。
• 一方的な契約解除・損害賠償の請求
  解約条件や違約金などを定めていなかったため、突然契約を打ち切られ、損害が発生。
  ※キャンセルポリシーや損害賠償の定めがなく、交渉が難航。
• 個人間取引やフリーランス案件での未払い
  SNS・クラウドソーシング等での個人契約で、業務後に連絡が取れなくなる等の未払い事例。
  ※「友人同士だから」「ネットで知り合ったから」と安心せず、必ず書面で合意を。
• 知的財産権・著作権を巡る紛争
  著作権の帰属や利用範囲が不明確なまま制作物を納品し、後日トラブルへ発展。
  ※クリエイティブ・IT業界で特に多い問題。

契約自体は「口頭」や「メール」でも法的効力が生じる場合がありますが、
証拠力や「条項の明確さ」「後日の立証」の観点では、書面での契約書が圧倒的に有利です。
取引規模が小さい場合でも、トラブル予防・証拠保全のために必ず契約書を交わしましょう。

• メール・LINEのやりとりは「証拠不十分」…内容が曖昧なままやりとりを重ねることで、後に「合意が成立していない」と主張されるリスク。
• 録音やメモも立証力に限界…特に金銭・業務範囲・権利関係は、条項ごとに明文化することが重要。
• 契約書には「条項ごとの合意」が残る…署名・押印があることで、双方の合意と意思が明確に示される。

どんなに信頼している相手でも「後で揉めることは絶対にない」とは言い切れません。
取引の大小に関わらず、「備え」として契約書を作成することがビジネスのリスクマネジメントです。

「トラブルになったら話し合えばよい」では済まない現実があります。
事業の継続や信用維持の観点からも、必ず契約書を作成しましょう。

• 「小規模な取引だから必要ない」→金額や取引規模にかかわらず、万一のリスクは存在します。
• 「親しい間柄だから大丈夫」→家族・友人間トラブルも数多く発生。信頼関係のためにも契約書が大切。
• 「契約書がなくても法律で守られている」→契約自由の原則がある一方、細部の合意内容は書面で残さなければ主張できません。
• 「テンプレートをコピペすれば安心」→業種や契約内容に応じたカスタマイズ・リスク分析が不可欠です。

行政書士はこうアドバイスします。
どんなに小さな取引・信頼関係でも、最低限の契約書を作ることで双方安心して取引ができ、トラブルも未然に防げます。

• 目的・範囲・報酬・納期・権利関係を必ず明記（曖昧な表現を避ける）
• 万一に備えた「損害賠償」や「解除」条項を盛り込む
• 秘密保持・競業避止など、情報管理条項の充実
• 電子契約や電子署名にも法的効力がある（クラウド契約も普及）
• 署名・押印・保管方法も要確認（印鑑不要論が進む一方で、トラブル時の真正性担保は重要）

契約書の作成は「予防法務」の最たるもの。
取引全体のリスク管理・説明責任・信頼構築のためにも、ぜひ専門家のチェックを活用しましょう。

• 後日のトラブルや紛争を防ぐ「備え」として必須
• 内容の確認・証拠保全・リスク管理のためにも重要
• 個人・法人問わず、取引内容を明確に残すことが安全・安心の第一歩
• 契約書があることで、安心してビジネスを展開できる

契約書の作成は「リスク回避」だけでなく、ビジネスをスムーズに進めるための信頼構築にもつながります。
どんな取引にも「備え」としての契約書作成を徹底しましょう。