契約書に反社会的勢力排除条項を設ける目的を解説します。反社の定義、表明・確約、禁止行為、無催告解除、解除後の損害賠償、取引開始前の反社チェックまで行政書士が説明します。
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契約書における反社会的勢力排除条項とは
反社会的勢力排除条項、いわゆる「反社条項」とは、契約当事者が暴力団などの反社会的勢力に該当しないことを確認し、該当した場合や一定の不当行為を行った場合に契約を解除できるようにする条項です。
業務委託契約、売買契約、取引基本契約、秘密保持契約、賃貸借契約など、継続的な取引関係を予定する契約書を中心に設けられています。
反社条項は、単に「当社は反社会的勢力と関係ありません」と宣言するだけの条項ではありません。
実務上は、契約当事者やその役員等について反社会的勢力との関係が判明したときに、どのような手続きで契約を終了させるのか、解除に伴う損害を誰が負担するのかまで整理する必要があります。
契約書に反社条項がなければ、取引開始後に問題が判明しても、どの条項に基づいて契約を解除するのかが不明確になる可能性があります。
反社条項は、問題が起きた後に責任を追及するだけでなく、不適切な相手との取引関係から速やかに離脱するための仕組みとして重要です。
反社条項はすべての契約に法律上必須なのか
反社条項は多くの契約書に盛り込まれていますが、あらゆる民間契約について、法律上一律に記載が義務付けられているわけではありません。
一方で、国が公表した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」や、各都道府県の暴力団排除条例を背景として、企業には反社会的勢力との関係を遮断する姿勢が求められています。
たとえば愛知県暴力団排除条例では、事業者が契約を締結する際、契約の相手方が暴力団の利益につながる行為を行わないことを確認し、該当することが判明した場合に契約を解除できるよう努めることなどが定められています。
また、金融、不動産、建設、保険、リースなど、取引先の信用確認が重視される業界では、反社条項がなければ社内審査や取引先審査を通らないこともあります。
したがって、「すべての契約に法律上必須」と断定することは適切ではありませんが、取引金額が大きい契約、継続的な契約、再委託を伴う契約、企業情報や顧客情報を共有する契約では、設置を積極的に検討すべき条項といえます。
反社会的勢力として定義する対象
反社条項を作成する際は、何を「反社会的勢力」として扱うのかを定義します。
一般的な契約書では、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなってから一定期間を経過していない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団などを対象とします。
さらに、「その他これらに準ずる者」という文言を加え、形式的な名称だけでは判断できない関係者も対象に含めることがあります。
ただし、確認すべき範囲は契約当事者本人だけとは限りません。
法人間契約では、法人そのものに加えて、代表者、役員、実質的に経営を支配する者などを対象に含めるのが一般的です。取引内容によっては、代理人、媒介業者、再委託先、下請事業者まで確認対象とすることもあります。
もっとも、対象者を際限なく広げると、契約当事者が現実的に確認できない範囲まで責任を負うことになります。
誰を確認対象とするかは、契約の種類、取引規模、再委託の有無、業界の実情に応じて設計する必要があります。
表明・確約と禁止行為を分けて定める
実効性のある反社条項を作るには、「反社会的勢力に該当しないこと」と「反社会的な行為をしないこと」を分けて規定することが重要です。
最初に定めるのが、現在および将来にわたり反社会的勢力に該当しないという表明・確約です。
しかし、形式上は反社会的勢力に該当しない相手であっても、取引中に暴力的な要求や威圧的な行為を行う可能性があります。そのため、地位や属性だけでなく、具体的な行為も禁止対象として定めます。
代表的な禁止行為は、暴力的な要求、法的な責任の範囲を超えた不当要求、脅迫的な言動、暴力行為、風説の流布や偽計・威力を用いた信用毀損、業務妨害などです。
本人が直接行う場合だけでなく、第三者を利用してこれらの行為を行う場合も対象にしておく必要があります。
このように、「誰に該当するか」と「何をしてはいけないか」を分けて定めることで、反社条項が適用される場面を明確にできます。
反社条項を設ける実務上の目的
反社条項を設ける最大の目的は、問題のある相手との契約関係を解消する根拠を確保することです。
取引開始後に相手方と反社会的勢力との関係が判明しても、契約書に解除根拠がなければ、通常の解除条項や債務不履行の規定によって対応できるかを検討しなければなりません。
反社条項があれば、表明・確約への違反を理由として、催告をせずに契約を解除できるよう設計できます。
また、反社条項は取引前の確認にも役立ちます。
契約書への署名や押印を求めることで、相手方から反社会的勢力に該当しない旨の明確な回答を得られます。後から申告内容が虚偽だったと判明した場合には、その虚偽申告自体を契約違反として扱える可能性があります。
さらに、元請会社、金融機関、取引先などに対して、自社が反社会的勢力との関係遮断に取り組んでいることを示す意味もあります。
もっとも、反社条項を入れただけで相手方の信用が保証されるわけではありません。
契約書への記載と取引開始前の確認を組み合わせて運用することが大切です。
反社会的勢力排除条項の条文例
反社条項は、契約内容に応じて調整する必要がありますが、基本的な構成は次のようになります。
第○条(反社会的勢力の排除)
1.甲および乙は、自らならびに自らの役員および実質的に経営を支配する者が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者に該当せず、将来にわたっても該当しないことを表明し、確約する。
2.甲および乙は、自らまたは第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、脅迫的な言動または暴力を用いる行為、風説を流布し、偽計または威力を用いて相手方の信用を毀損し、または業務を妨害する行為その他これらに準ずる行為を行わない。
3.甲または乙は、相手方が前2項のいずれかに違反したことが判明した場合、何らの催告を要することなく、本契約の全部または一部を解除することができる。
4.前項に基づいて契約を解除した当事者は、当該解除によって相手方に生じた損害を賠償する責任を負わない。なお、違反した当事者は、当該違反によって相手方に生じた損害を賠償するものとする。
これは基本的な条文例であり、すべての契約にそのまま使用できるものではありません。
再委託が予定されている業務委託契約では、再委託先に問題が判明した場合の報告義務や排除義務まで定めることがあります。
取引基本契約では、個別契約への影響や、すでに発注済みの案件をどのように処理するかも検討が必要です。
無催告解除・免責・損害賠償の定め方
一般的な契約違反では、相手方に履行や是正を求め、それでも改善されない場合に解除する構成が使われます。
しかし、反社会的勢力との関係は、一定期間を設けて是正すれば取引を継続できる性質の問題とは限りません。そのため、反社条項では「何らの催告を要することなく解除できる」と定めるのが一般的です。
あわせて、適法に契約を解除した側が、解除によって相手方に生じた損害を賠償しないことも規定します。
ただし、解除した時点で、契約上のすべての権利義務が自動的に消滅するとは限りません。
解除前に完了した業務の報酬、納品済み成果物の取扱い、貸与物や秘密情報の返還、未払金、損害賠償請求などは、契約内容に応じて整理する必要があります。
反社条項だけを追加するのではなく、一般的な解除条項、損害賠償条項、秘密保持条項、契約終了後の措置と整合させることが重要です。
「合理的な疑い」による解除の注意点
反社条項の中には、「反社会的勢力であると認める合理的な理由がある場合」に契約を解除できると定めているものがあります。
しかし、何をもって合理的な理由とするのかが曖昧なままだと、単なる噂や主観的な印象だけで契約を解除したとして、相手方と争いになる可能性があります。
反社会的勢力との関係を確定的に証明することが難しい場面に備える必要はありますが、解除条件を広げすぎれば、一方当事者が恣意的に契約を終了できる条項にもなりかねません。
実務上は、疑義が生じた場合に、相手方へ説明や資料の提出を求める条項を設ける方法があります。
そのうえで、合理的な理由なく説明を拒否した場合、虚偽の回答をした場合、必要な調査に協力しなかった場合を別の契約違反として定めることが考えられます。
反社条項では、解除しやすくすることだけでなく、客観的に説明できる解除手続きを整えることが重要です。
契約前の反社チェックと判明後の対応
反社条項は、取引開始前の確認と組み合わせることで機能します。
新規取引では、相手方の商号、本店所在地、代表者、役員、実質的な経営者などを確認します。法人の登記事項、公式サイト、報道情報、信用調査情報など、適法に取得できる情報を基に確認するのが基本です。
長期間継続する取引や高額な取引では、契約締結時だけでなく、契約更新時や代表者変更時に再確認することも考えられます。
取引開始後に疑わしい情報が出た場合は、直ちに断定して解除するのではなく、確認した情報や相手方とのやり取りを記録として残します。
そのうえで、契約書の条項に従って説明を求め、必要に応じて警察、暴力追放運動推進センター、弁護士などの関係機関・専門家への相談を検討します。
不当要求や脅迫を受けている場合は、自社だけで対応しようとせず、安全確保を優先する必要があります。
契約書を作成する段階では、「反社条項を入れるか」だけでなく、問題が判明したときに社内で誰が確認し、誰が解除を判断するのかまで整理しておくと、より実効性が高まります。
まとめ|契約全体と整合する反社条項を設計する
反社会的勢力排除条項は、契約当事者が反社会的勢力に該当しないことを確認し、問題が判明した場合に契約関係を解消するための重要な条項です。
ただし、単にインターネット上のひな型を貼り付けるだけでは、実際の取引に対応できないことがあります。
反社会的勢力の定義、確認対象となる人物、禁止行為、無催告解除の条件、解除した側の免責、違反した側の損害賠償責任を、一つの流れとして設計する必要があります。
さらに、再委託先や下請事業者まで対象にするのか、疑義が生じた場合にどのような確認を行うのか、解除後の未払金や成果物をどう処理するのかも、契約内容によって異なります。
「反社条項のない契約書を提示された」
「相手方の反社条項が一方的で、このまま締結してよいか分からない」
「業務委託契約やNDAに反社条項を追加したい」
このような場合は、条項だけを確認するのではなく、契約書全体との整合性を確認することが大切です。
行政書士は、取引内容や契約当事者の立場を確認したうえで、契約書の新規作成や、相手方から提示された契約書の内容確認を行います。
問題が起きた後に解除方法を探すのではなく、取引開始前に、必要な出口を契約書へ設けておきましょう。
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