退職後も会社から電話・LINE・メールが来る場合の対処法を解説します。無視してよい連絡、対応した方がよい連絡、会社からのしつこい連絡を止めたい場合の対応、内容証明でできることを行政書士がわかりやすく説明します。
退職後も会社から連絡が来ることはある
退職の意思を伝えたあと、または退職日を迎えたあとでも、会社から連絡が来ることはあります。
退職届を出したのに上司から電話が来る。LINEで「一度話したい」と送られてくる。退職後なのに「引継ぎが終わっていない」「備品を返しに来い」「損害が出たら請求する」などと言われる。
このような連絡が続くと、退職したはずなのに気持ちが休まりません。
特に、退職前から上司との関係が悪かった方、強い引き止めを受けていた方、精神的に限界に近い状態で退職を決めた方にとって、会社からの着信や通知は大きな負担になります。
ただし、退職後の会社からの連絡がすべて不当というわけではありません。
退職手続きには、貸与品の返却、健康保険証の返却、離職票や源泉徴収票などの書類のやり取り、最終給与の確認など、一定の事務連絡が発生することがあります。ハローワークで基本手当の手続きを行う場合には、離職票などが必要書類として案内されています。
問題は、必要な事務連絡を超えて、本人に直接電話を繰り返したり、退職を撤回させようとしたり、出社や面談を強く求めたりするケースです。
退職後も会社から連絡が来る場合は、感情的に反応するのではなく、まず「何のための連絡なのか」を整理することが大切です。
まず確認したいのは「退職がきちんと伝わっているか」
会社から連絡が続く場合、最初に確認すべきなのは、退職の意思表示が明確に会社へ届いているかどうかです。
口頭で「辞めたいです」と伝えただけの場合、会社側が「まだ相談段階だ」と受け止めていることがあります。
また、「退職願」という形で提出した場合、会社側が承諾するまでは合意退職の申し込みとして扱われる可能性があります。確実に一定の期日で退職したい場合には、退職の意思を明確に記載した退職届を提出して任意退職の申入れを行うことが望ましいとされています。
期間の定めのない雇用契約であれば、原則として退職の申入れから2週間で労働契約は終了します。会社の同意がないと退職できないわけではありません。
そのため、会社から「退職は認めていない」「まだ辞めたことになっていない」と言われている場合でも、退職の意思表示が明確に到達していれば、会社の承認だけで退職の効力が左右されるとは限りません。
不安な場合は、退職届や通知書を内容証明郵便で送付し、退職意思、退職日、以後の連絡方法を明確にしておくと、後日のトラブルを防ぎやすくなります。
無視してよい連絡と対応した方がよい連絡
退職後の会社からの連絡は、内容によって対応を分ける必要があります。
対応した方がよいのは、退職手続きに必要な事務連絡です。
健康保険証の返却、社員証・制服・鍵・パソコン・携帯電話などの貸与品の返却、源泉徴収票や離職票の送付先確認、最終給与の明細、住民税や社会保険に関する事務連絡などは、退職後でも一定の対応が必要になることがあります。
一方で、退職を撤回させるための連絡、感情的な説教、長時間の電話、出社を求めるだけの連絡、人格を否定するようなメッセージ、損害賠償をちらつかせて不安をあおる連絡については、慎重に対応すべきです。
特に、電話で直接話してしまうと、その場の雰囲気で不利な発言をしてしまったり、退職日や有給取得について曖昧な返答をしてしまったりすることがあります。
退職後の連絡にすべて応じる必要はありません。
必要なのは、会社に対して誠実に対応すべき事務連絡と、本人を精神的に追い込むような不要な連絡を切り分けることです。
電話には出ず、記録が残る方法で対応する
会社から電話が来ると、反射的に出なければいけないと思ってしまう方がいます。
しかし、退職後の連絡は、できる限り記録が残る方法で対応した方が安全です。
電話では、相手が何を言ったのか、自分がどう答えたのかを後から確認しにくくなります。強い口調で責められた場合でも、証拠が残らなければ、後日説明することが難しくなります。
そのため、会社から電話が来てもすぐに折り返す必要はありません。
対応する場合は、メールやLINE、書面など、内容が残る方法に切り替えるのが基本です。
「退職に関するご連絡は、記録保持のためメールでお願いいたします」
「電話での対応は控えさせていただきます。必要事項がある場合は、文面でご連絡ください」
このように、冷静な文面で伝えれば足ります。
大切なのは、相手の口調に合わせて感情的な返信をしないことです。
会社側が強い言葉を使ってきたとしても、こちらまで強い表現で返してしまうと、不要な紛争に発展する可能性があります。
退職後のやり取りは、短く、事務的に、記録が残る形で進めることが重要です。
貸与品・保険証・制服などの返却はどうするか
退職後の連絡で多いのが、会社からの貸与品返却に関するものです。
制服、社員証、鍵、パソコン、スマートフォン、入館証、健康保険証などを返していない場合、会社から返却を求められることは自然です。
ただし、返却のために必ず会社へ出向かなければならないわけではありません。
会社と直接会いたくない場合は、郵送で返却する方法があります。
郵送する際は、普通郵便ではなく、追跡できる方法を使う方が安心です。レターパック、宅配便、簡易書留などを利用し、発送日、追跡番号、同封物の内容を控えておきます。
また、貸与品を返却する際は、簡単な送付状を同封しておくと、後から「返ってきていない」と言われた場合の説明がしやすくなります。
送付状には、退職に伴い貸与品を返却すること、同封物の一覧、発送日、氏名を記載しておけば十分です。
会社から「直接持ってこい」と言われた場合でも、精神的負担が大きい場合やトラブルが予想される場合には、郵送で対応する方が安全なことがあります。
退職後の返却対応は、会社に出向くことよりも、返却した事実を残すことが大切です。
「出社しろ」「直接話せ」と言われた場合
退職後に会社から「一度会社に来い」「直接説明しろ」「顔を見て話すのが筋だ」と言われることがあります。
真面目な方ほど、出社しなければ失礼なのではないかと悩んでしまいます。
しかし、退職の意思を明確に伝えており、退職日も到来している場合、会社に直接出向いて話し合いをしなければ退職できないわけではありません。
もちろん、業務上必要な引継ぎ資料の提出や貸与品の返却など、整理すべき事項が残っている場合は対応が必要です。
ただ、それは必ず対面で行わなければならないとは限りません。
引継ぎ事項は文書でまとめる。貸与品は郵送する。退職書類は郵送で受け取る。連絡はメールで行う。
このように、直接会わずに進められることは多くあります。
退職後に会社へ行くことで、再度説得されたり、責められたり、退職日を変更するよう求められたりする可能性がある場合は、無理に出社しない方がよいこともあります。
会社との関係が悪化している場合ほど、対面ではなく、書面で線を引くことが重要です。
家族や緊急連絡先に連絡された場合
本人が電話に出ない場合、会社が家族や緊急連絡先に連絡することがあります。
本当に本人の安否確認が必要な状況であれば、緊急連絡先への連絡が問題とは限りません。
しかし、退職意思を伝えているにもかかわらず、本人を説得する目的で家族に連絡したり、家族に退職を止めさせようとしたり、退職したことを責めるような内容を伝えたりする場合は、慎重に対応する必要があります。
家族に連絡されることが不安な場合は、会社に対して、今後の連絡先を明確に指定しておくことが有効です。
「退職に関する連絡は本人宛のメールまたは書面に限る」
「家族・緊急連絡先への連絡は控えてください」
このように通知しておくことで、会社側にも連絡方法の線引きを示すことができます。
会社とのやり取りが精神的な負担になっている方にとって、家族にまで連絡が行くことは大きな不安材料です。
そのような場合は、早めに書面で連絡窓口を整理しておくことが大切です。
しつこい連絡を止めたい場合は内容証明で通知する
会社からの連絡が止まらない場合、口頭やLINEだけで対応し続けると、状況が長引くことがあります。
特に、上司から何度も電話が来る、退職後も出社を求められる、退職を認めないと言われる、家族に連絡される、強い言葉で責められるという場合は、書面で正式に通知することを検討してもよいでしょう。
内容証明郵便を使うことで、いつ、どのような内容を会社に通知したのかを明確に残すことができます。
内容証明では、退職の意思、退職日、有給取得の希望、貸与品の返却方法、退職書類の送付依頼、今後の連絡方法などを整理して通知できます。
また、「今後の連絡は書面またはメールでお願いします」「本人への電話連絡は控えてください」といった連絡方法の指定も記載できます。
内容証明を送ったからといって、会社との問題がすべて自動的に解決するわけではありません。
しかし、退職の意思表示や連絡方法を明確に残すことで、会社側の曖昧な対応を防ぎやすくなります。
退職後も会社からの連絡が続いている方にとって、内容証明は、会社との距離を取るための現実的な手段になります。
退職後の連絡でやってはいけないこと
退職後に会社から連絡が来ると、不安や怒りから、すぐに強い言葉で返したくなることがあります。
しかし、退職トラブルでは、こちらの対応も後から確認される可能性があります。
感情的な返信をする、会社を挑発する、SNSに会社名や上司の名前を書き込む、貸与品を返さない、必要書類のやり取りまで拒否する、といった対応は避けるべきです。
会社側の連絡に問題がある場合でも、こちらが不適切な対応をしてしまうと、話がこじれます。
また、「もう辞めたので一切関係ありません」として、必要な事務手続きまで放置してしまうのも得策ではありません。
退職後であっても、返却すべき物は返却し、受け取るべき書類は受け取り、必要な連絡は記録に残る方法で対応する。
そのうえで、不要な電話や出社要求には応じない。
この線引きが重要です。
退職後の会社対応は、相手を言い負かすことが目的ではありません。
自分の退職を確定させ、会社との関係を静かに終わらせることが目的です。
まとめ
退職後も会社から連絡が来ると、「まだ退職できていないのではないか」「電話に出ないと問題になるのではないか」と不安になる方は少なくありません。
しかし、退職の意思表示が明確に会社へ届いており、退職日も整理されている場合、会社からの連絡すべてに応じ続ける必要はありません。
大切なのは、退職手続きに必要な連絡と、本人を精神的に追い込むような不要な連絡を分けることです。
貸与品の返却、保険証の返却、退職書類の受け取り、最終給与に関する確認などは、記録が残る形で対応しましょう。
一方で、退職を撤回させるための電話、出社要求、説教、家族への連絡、脅すようなメッセージが続く場合は、無理に直接対応する必要はありません。
電話ではなくメールや書面での対応に切り替え、必要に応じて内容証明で退職意思と今後の連絡方法を明確にしておくことが有効です。
「会社ともう直接連絡を取りたくない」
「退職後も電話が来てつらい」
「自分で返信するとまた責められそうで怖い」
このような状態であれば、一人で抱え込まず、早めに相談することをおすすめします。
退職は、会社に許してもらうものではありません。
きちんと意思表示をして、必要な手続きを整理すれば、会社と直接やり取りを続けなくても進められる場合があります。
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