トラブル発生時にどこで誰と解決するか。裁判管轄・協議・仲裁など、紛争解決条項の選び方を行政書士がわかりやすく解説します。
1. 紛争解決条項とは?
紛争解決条項とは、契約に関するトラブルが起こった際に、どのような手続きで、どの機関で、誰が解決するのかをあらかじめ決めておく条項です。
契約書の最後の章に置かれることが多く、
- まずは当事者同士で協議する
- 解決しない場合は裁判所を使う
- または仲裁機関を使う
などの流れを定めます。
紛争解決条項がないと、トラブル発生時に
「どこの裁判所が管轄か」
「協議する必要があるか」
「仲裁にするのか」
などが不明確になり、さらに争いが深まる恐れがあります。
2. 「協議条項」を置く意味
実務では、紛争解決条項の入口として 「協議条項」 を置くのが一般的です。
◆協議条項の典型例
「本契約に関連して紛争が生じた場合、当事者は誠意をもって協議し、その解決に努めるものとする。」
一見形式的に見えますが、協議条項には重要な役割があります。
(1)裁判や仲裁を避け、話し合いで解決する余地を確保
裁判は時間も費用もかかります。
協議条項を入れておけば、まずは紛争を「軽度のうちに」解決できる可能性があります。
(2)誠実交渉義務としての機能
直接的な強制力はありませんが、
「協議しなかった側に不利な事情として扱われる」
ことが実務上あります。
(3)当事者同士のコミュニケーション改善
事務的な漏れ・誤解・連絡不足が原因の紛争は多いため、協議のプロセス自体が紛争防止に役立ちます。
3. 裁判管轄条項の基本
紛争解決条項の中でも特に重要なのが、裁判管轄の指定です。
裁判は、
- 原則として「被告の住所地の裁判所」で行われる
というルールがありますが、契約で別の裁判所を指定することができます。
◆よく使われる条文例
「本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。」
◆裁判管轄指定のメリット
- 自社に有利な場所で裁判できる(移動コスト削減)
- 手続きが統一できる(全国展開企業には大きなメリット)
- 相手方の所在地に左右されない
弊所が契約書を作る場合も、
「基本的には自社所在地の裁判所を指定する」
のが一般的です。
◆指定時の注意点
- 小額案件の場合、簡易裁判所を指定することもある
- 海外企業との契約の場合、日本の裁判所を指定しておかないと不利
契約規模や相手方の所在地によって調整します。
4. 仲裁・調停を選ぶ場合のポイント
紛争解決の手段は裁判だけではありません。
契約によっては 「仲裁」 や 「調停」 を採用するケースもあります。
◆仲裁(Arbitration)
仲裁は、民間の仲裁機関に判断を委ねる方法です。
メリット
- 裁判より早い
- 非公開で行われる(企業秘密を守れる)
- 仲裁判断は裁判と同じ強制力を持つ
デメリット
- 仲裁費用が高額になることがある
- 仲裁人を選ぶ手間がある
- 一度仲裁にすると裁判に戻れないことが多い
そのため、機密性の高い取引や国際取引でよく使われます。
◆調停(Mediation)
調停は、中立的な第三者が間に入り、話し合いをサポートする方式です。
メリット
- 当事者の合意を尊重できる
- コストが比較的低い
- 関係を悪化させにくい
デメリット
- 法的拘束力は弱い
- 合意できなければ解決しない
中小企業の取引では、調停のほうが実情に合う場合もあります。
◆契約書に記載する例
「本契約に関する紛争については、日本商事仲裁協会の仲裁規則に従い、仲裁により解決する。」
または
「協議により解決しない場合は、〇〇簡易裁判所において調停を行う。」
契約の性質や取引相手に応じて選びます。
5. まとめ:紛争解決条項はリスク管理の最終ライン
紛争解決条項は、契約トラブルが発生したときに「どこで戦うか」を決める極めて重要な条項です。
要点をまとめると次のとおりです。
- 協議条項は紛争の早期解決に大きく役立つ
- 裁判管轄は「自社所在地の裁判所」を指定するのが一般的
- 仲裁はスピードと非公開性がメリット
- 調停は関係悪化を避けたい場合に有効
- 紛争解決の手段をあらかじめ定めておくことで、トラブル時の混乱を防げる
弊所では、企業規模や取引内容、業種の特性に応じて、
最適な紛争解決条項を設計します。
契約は「万が一」の時こそ効力を発揮するため、
出口(紛争時のルール)を決めておくことが非常に重要です。


