介護職・看護職はシフト制ゆえ退職しづらいことが多い。本記事では、シフト制特有の退職トラブル、内容証明で辞める際のポイント、退職日の設定方法、電話なしで辞める手順を行政書士が詳しく解説します。
1.シフト制は「辞めづらい仕組み」が多い
介護職・看護職の相談で特に多いのが、
「辞めたいのに辞めさせてもらえない」 という声です。
シフト制の現場では、
- 人手不足が慢性化している
- 急な退職を嫌がる文化がある
- 上司・主任が強く引き止める
- 夜勤や早番の人員調整が大変
といった事情から、
退職がスムーズに進みにくいことが多く見られます。
しかし、シフト制かどうかに関係なく、
退職は 労働者の一方的な意思表示で成立 します。
許可制ではありません。
そのため、話し合いが難しい職場では、
内容証明による退職通知が非常に有効です。
2.介護・看護の現場で起こりやすい退職トラブル
シフト制の介護・看護現場には、特有のトラブルが発生します。
◎トラブル①「辞めるなら後任が来るまで続けろ」
法律上、これは無効です。
代わりの職員を確保するのは施設側の責任であり、
退職の条件にすることはできません。
◎トラブル②「利用者の迷惑を考えろ」と言われる
倫理的な話と、労働契約の話は別です。
継続勤務が困難なら退職は正当です。
◎トラブル③ 夜勤・早番が理由で辞めづらい
夜勤の負担は大きく、
心身に不調をきたしている場合は「やむを得ない事由」(民法628条)に該当します。
◎トラブル④ 退職届を受け取ってもらえない
内容証明で通知すれば、
受取拒否されても到達の効果が認められます。
◎トラブル⑤ 電話・LINEで強い圧力をかけられる
介護・看護職では人間関係が密であるため、
「情」に訴えて引き止められることが多い。
このような精神的負担の大きい環境では、
書面中心で手続きを進める方が安全です。
3.内容証明で退職を伝えるメリット
内容証明は、退職トラブルの多い介護・看護職に特に適した手段です。
◎メリット① 退職日の確定ができる
シフト制は退職日が曖昧になりがちですが、
内容証明で明記すれば「その日」で確定します。
◎メリット② 退職理由を簡潔に残せる
心身不調や過度な業務負担など、
「やむを得ない事由」に該当する場合は証拠になります。
◎メリット③ 電話対応を避けられる
「直接話したい」と言われても、
書面で伝えていれば対応義務はありません。
◎メリット④ 引き止めや圧力から身を守れる
上司が理不尽な対応をしてくる場合でも、
文書で淡々と進めれば、感情的な衝突を避けられます。
◎メリット⑤ 精神的負担を圧倒的に軽減
介護・看護職は過度のストレスが蓄積されやすいため、
書面による退職は精神的なセーフティラインになります。
4.シフト制での退職日に関する考え方
シフト制の場合、最も揉めるのが 退職日 の取り扱いです。
施設側は、
「来月のシフトが確定してから」「後任が入るまで」
といった理由で退職日を引き延ばそうとすることがあります。
しかし、法的には次の通りです。
◎正社員・契約社員:民法627条の2週間ルール
退職の意思表示をしてから2週間で労働契約が終了します。
2週間“働く義務”があるわけではありません。
◎アルバイト・パート:即日退職が認められる場合も
心身不調やパワハラなど、
「やむを得ない事由」があれば即日で辞められます。
◎内容証明の到達日=退職日とできる
内容証明が会社に届いた日を
そのまま「退職日」とする運用は実務上一般的です。
◎退職日の例
- 最短で辞めたい → 到達日退職
- 心身不調 → 到達日退職が最も安全
- 有給が残っている → 有給消化後の退職日を設定
シフトの都合は 会社側の問題であり、労働者が調整するものではない というのがポイントです。
5.内容証明に盛り込むべき文言(介護・看護職向け)
介護・看護職特有の事情を踏まえ、
内容証明には以下を盛り込みます。
■① 退職の意思表示
本書面をもって退職の意思を通知いたします。
■② 退職日(到達日がおすすめ)
退職日は本書面の到達日といたします。
■③ 心身負担や業務過多を簡潔に記載
業務負担が大きく、継続勤務が困難な状況です。
or
心身の不調により、勤務継続が難しくなっております。
■④ 連絡制限(お願いベース)
可能な限り直接のお電話はお控えいただけますと幸いです。
※介護・看護職は電話が非常に多いので、必須文言。
■⑤ 貸与物の返却方法
貸与物は〇日までに郵送にて返却いたします。
6.電話連絡なしで辞めるためのステップ
電話が苦手、話すと断れない、圧力が怖い──
介護・看護職では特に多い悩みです。
内容証明を使う場合、以下の手順が安全です。
① 退職日を決める
最短で辞めたい場合は「到達日退職」が確実。
② 内容証明で退職を通知
これで手続きは9割完了します。
③ 電話には出なくてよい
対応義務はありません。
会社側にはメールでの連絡を依頼します。
④ 貸与物を郵送で返却
職場に行く必要はありません。
訪問を求められても応じる必要はありません。
⑤ 行政書士に相談
文章作成や退職日の設定は、専門家のサポートで安全に進められます。
7.損害賠償や引き継ぎ不足が不安な方へ
介護・看護職は利用者への責任感が強いため、
「辞めたら損害賠償されるのでは?」と不安を抱く方も少なくありません。
しかし実務上、
損害賠償が成立するケースは極めて稀 です。
◎理由① 損害額の立証が難しい
「あなたが辞めたせい」で具体的な損害が発生したと
会社が証明することはほぼ不可能です。
◎理由② 退職は労働者の権利
やむを得ない事由があれば途中退職も認められます。
◎理由③ 内容証明で記録を残すとさらに安全
退職理由や経緯を文書に残すことで、
後から会社が追及しづらくなります。
8.まとめ|過度に我慢せず、書面で手続きを進めるのが最も安全
介護職・看護職は、人手不足と人間関係のストレスが多い職場です。
そのため、退職を伝えること自体が大きな負担になります。
しかし、退職は「労働者の一方的な意思表示」であり、
許可制ではありません。
- 引き止めが強い
- 電話が怖い
- シフトを理由に辞めさせてもらえない
- 業務が過酷
- 心身が限界
こうした状況にあるなら、
内容証明は安全に辞めるための強力なツールです。
書面で淡々と進めることで、
感情的なぶつかりを避け、最短で退職が成立します。


