試用期間中でも退職は自由。内容証明で退職を伝えることも可能です。本記事では、企業側が示しがちな反応、法的整理、試用期間ならではの注意点、トラブルを避ける実務的対処法を行政書士が詳しく解説します。
1.試用期間中でも退職はできるのか
結論から言うと、
試用期間中であっても自由に退職できます。
試用期間は「本採用前の評価期間」に過ぎず、
労働契約が成立している以上、
退職のルールは通常の従業員と同じです。
◎よくある誤解
「試用期間中は辞められない」
→ 誤りです。
「会社が許可しないと退職できない」
→ 誤りです。
◎法律上は通常の労働契約と同じ扱い
民法627条により、
退職の意思表示から2週間で契約解除が可能です。
ただし、試用期間中は
- 勤務期間が短い
- 職場の人間関係が希薄
- 労働条件が合わないと感じやすい
などの理由から、即日退職を希望するケースも多くあります。
そこで活用できるのが 内容証明 です。
2.内容証明で退職を伝えるメリット
試用期間中の退職は、
「言った」「言わない」のトラブルが起きやすい時期です。
内容証明には次のメリットがあります。
◎メリット① 退職の意思表示を証拠として残せる
試用期間中は人事担当や上司との連絡が疎かになりがちで、
退職が正しく処理されないケースがあります。
内容証明なら証拠化され、手続きが確実に進みます。
◎メリット② 即日退職の主張もしやすい
労働条件の大幅な相違や心身不調があれば、
即日退職の正当性が強くなります。
◎メリット③ 対面・電話での引き止めを避けられる
特に小規模企業では、
直接呼び出されたり、強い引き止めを受けるケースが少なくありません。
書面なら冷静に進められます。
◎メリット④ 会社側が退職届を受け取らなくても成立
受取拒否されても到達扱いになるため、
退職手続きが確実に進みます。
3.企業側が示しがちな反応とその整理
試用期間中の退職に対し、
企業側は次のような反応を示すことがあります。
◎反応①「最低でも1ヶ月は働いてもらう」
→ 法的な根拠はありません。
◎反応②「試用期間中は辞めさせない」
→ 誤り。退職の自由は試用期間でも変わりません。
◎反応③「引き継ぎが終わっていない」
→ 試用期間中はほとんど引き継ぎ業務はありません。
退職拒否の理由にはなりません。
◎反応④「損害賠償を検討する」
→ 実際に損害賠償が成立するケースは極めて稀です。
◎反応⑤「直接話し合おう」
→ 話す義務はありません。
精神的負担が大きい場合は書面で十分です。
企業側の反論は、
法律ではなく「会社の都合」に基づくものが大半です。
4.民法627条から見る退職日の考え方
試用期間中の退職でも、
退職日の考え方は通常と同じです。
◎通常は「退職の意思表示から2週間」
民法627条1項に基づき、
原則は2週間の期間が必要です。
◎例外:即日退職が成立するケース
民法628条の「やむを得ない事由」に該当する場合、
契約期間の途中でも即日退職が認められます。
例:
- 労働条件が求人と著しく異なる
- 過重労働
- パワハラ・いじめ
- 心身不調
- 生活上支障が出ている
◎内容証明を使う場合のおすすめ設定
到達日退職(最短)」
→ 心身不調や労働条件の相違がある場合に有効。
5.内容証明に入れるべき最低限の文言
試用期間中だからといって、
特別な書き方をする必要はありません。
最低限、次の文言が入っていれば十分です。
■① 退職の意思表示
本書面をもって退職の意思を通知いたします。
■② 退職日(到達日がおすすめ)
退職日は本書面の到達日といたします。
■③ 労働条件不一致・心身不調などの理由(簡潔でOK)
労働条件が当初の説明と異なり、継続勤務が困難な状況です。
or
心身の不調があり、勤務継続が難しくなっております。
■④ 電話を避けたい旨(お願いベース)
可能な限り、直接のお電話はお控えいただけますと幸いです。
■⑤ 貸与物返却方法
貸与物は〇日までに郵送にて返却いたします。
6.試用期間特有の注意点(実務ベース)
試用期間中の退職には、
通常の退職とは異なる注意点があります。
◎注意点① 勤務日数が短いほど説明は簡潔でよい
細かい理由を書く必要はありません。
◎注意点② 会社側の処理が遅れる可能性がある
試用期間中は管理が曖昧な企業も多い。
→ 内容証明で証拠を残すことが重要。
◎注意点③ 社会保険・雇用保険の加入状況を確認
加入している場合は、
退職日の扱いによって資格喪失日が変わります。
◎注意点④ 出社を求められても応じなくてよい
心身不調やトラブル回避のため、
郵送で完結させるのが安全です。
◎注意点⑤ 退職後の給与・交通費等は必ず書面で確認
支払い漏れは意外と多いため注意。
7.トラブルを避けるための安全な進め方
◎ステップ1:退職日の設定
最短の場合は到達日退職。
◎ステップ2:内容証明の発送
試用期間中は特に「即効性」が重要。
◎ステップ3:会社からの電話には出ない
書面で意思表示していれば、対応義務はありません。
◎ステップ4:貸与物は郵送
職場に行く必要はありません。
◎ステップ5:必要書類はメール等で対応
健康保険資格喪失証明書、源泉徴収票などは必ず受け取る。
8.まとめ|試用期間でも退職は自由。書面で安全に進める
試用期間中の退職は、
感情的・制度的な問題が絡みやすいですが、
法律上は通常の従業員と同じく自由です。
内容証明を使うことで、
- 退職意思が確実に伝わる
- 引き止めを回避できる
- トラブルを最小化できる
- 即日退職の主張も可能
といったメリットが得られます。
「合わない」「続けられない」と感じたら、
早期に退職手続きを進めることは正当であり、
あなたの心身を守るためにも重要です。


