訴訟リスクを抑える「反訴禁止条項」。法的有効性や実務上の注意点を行政書士がわかりやすく解説します。
1. 反訴禁止条項とは?
反訴禁止条項とは、一方の当事者が訴訟を起こした際に、相手方が反訴(対抗する訴え)を提起できないように制限する条項です。
「反訴」とは、訴えられた側がその訴訟の中で、逆に原告へ請求を行うことを指します。
例えば、取引先Aが「未払金の支払い」を求めてBを訴えた場合、Bが「納品に不備があったから支払う義務はない」として損害賠償を求めるのが反訴です。
反訴禁止条項を設けることで、紛争が複雑化するのを防ぎ、訴訟を一本化することが狙いとされています。
ただし、訴訟における当事者の防御権を制限する側面があるため、慎重な設計が求められます。
2. なぜ反訴禁止条項が設けられるのか
反訴禁止条項を設ける主な理由は、次の3点に整理できます。
- 訴訟の迅速化
訴訟中に相手方が反訴を提起すると、審理が長期化します。
反訴禁止条項を設けることで、1つの訴訟を短期間で解決できる可能性があります。 - 訴訟コストの削減
反訴によって訴訟範囲が広がると、弁護士費用や証拠準備などのコストが増加します。
これを防ぐことで、経済的負担を抑えることができます。 - 自社に有利な訴訟環境を作るため
特に「委託元」や「販売元」など立場の強い企業が、自社側の訴訟リスクを減らす目的で条項を設定するケースもあります。
ただし、取引の公平性を欠くような条文構成は、信頼関係の悪化を招くおそれがあるため、注意が必要です。
3. 条文例と法的な有効性
反訴禁止条項の典型的な書き方は、次のようになります。
第○条(反訴の禁止)
乙は、甲が本契約に基づいて提起する訴訟において、反訴をもってこれに対抗しないものとする。
乙は、甲に対する請求がある場合は、別途独立して訴訟を提起することができる。
このように、「反訴を禁じるが、別訴での請求は可能」としておくのが一般的です。
ただし、**完全な反訴禁止(別訴も不可)**とする条項は、当事者の防御権を不当に制限するおそれがあり、無効と判断される可能性があります。
民事訴訟法の趣旨からも、訴訟の公平性・対等性を確保することが求められます。
したがって、行政書士が契約書を作成する際には、
「反訴の禁止はあくまで訴訟の効率化を目的としたもの」として、合理的な範囲での制限にとどめる設計を推奨します。
4. 実務上の注意点とリスク
反訴禁止条項を設ける場合、以下のような実務上のリスクを理解しておく必要があります。
- 一方的な不利条項とみなされる可能性
契約の当事者が明らかに不均衡(例:大企業と個人事業者)な場合、
反訴禁止条項が「消費者契約法」や「公序良俗」に反すると判断されることもあります。 - 実際の訴訟では無効とされるケースがある
裁判所は、反訴禁止条項によって当事者の権利行使が過度に制限されていると判断すれば、条項を無効と扱うことがあります。 - 別訴のコスト増加リスク
反訴が禁止されていると、相手方は別途訴訟を起こす必要があり、結果的に双方のコストが増すこともあります。 - 紛争解決条項との整合性を取る必要
「管轄裁判所」「準拠法」「仲裁条項」などと併記する場合、どの紛争解決手段が優先されるのかを整理しておくことが大切です。
反訴禁止条項は、あくまで「訴訟の効率化を図る補助的な条項」であり、過度な制限は逆効果になる点に注意しましょう。
5. まとめ:慎重な設計で紛争リスクを最小化
反訴禁止条項は、一見シンプルですが、法的な意味合いは非常に繊細です。
使い方を誤ると、かえって契約の信頼性を損なうこともあります。
設計時のポイントは以下の3点です。
- 反訴を全面的に禁止せず、「別訴での請求は可能」と明記する
- 契約当事者の対等性を考慮し、不当な一方的条項にしない
- 紛争解決条項(裁判地・仲裁)との整合性を確保する
行政書士は、契約書全体を見渡して、訴訟リスクを最小限に抑えるためのバランス設計を行います。
法的拘束力と実務の現実性を両立させることが、反訴禁止条項を有効に活用する鍵です。


