未払い賃金・残業代の請求は、感情的になりやすく、かつトラブルに発展しやすい分野です。
本記事では行政書士の実務視点から、内容証明で未払い賃金・残業代を通知する意味、正しい使い方、注意点を整理します。
1. 未払い賃金・残業代トラブルの特徴
未払い賃金・残業代の問題は、次のような特徴があります。
・当事者の認識にズレがある
・証拠が十分に整理されていない
・感情が先行しやすい
・会社側が防御的になりやすい
そのため、いきなり強い請求をすると対立が深まるケースが少なくありません。
2. なぜ内容証明で通知するのか
未払い賃金・残業代について、まず内容証明で通知する目的は次の3点です。
■ 内容証明を使う理由
・請求の意思を明確に伝える
・請求時点を証拠として残す
・時効対策(完成猶予)につなげる
「すぐ払え」という圧力ではなく、正式な請求のスタートラインを示す意味合いが重要です。
3. 内容証明で書くべき基本事項
未払い賃金・残業代の内容証明では、次の事項を整理して記載します。
■ 基本構成
・雇用関係があった事実
・勤務期間
・未払いがあると認識している旨
・対象となる賃金・残業代の種類
・支払いを求める意思
重要なのは、「請求する意思」を明確に示すことです。
4. 金額の記載はどこまで必要か
金額については、必ずしも正確な確定額を記載する必要はありません。
・概算額
・算定途中である旨
・資料精査後に確定予定である旨
を記載する方法も実務上よく用いられます。
無理に断定額を書いてしまうと後の修正が難しくなる点に注意が必要です。
5. 注意点①:断定的な違法認定をしない
未払い賃金・残業代の内容証明で最も注意すべきなのがこの点です。
■ 危険な表現例
・「明らかに違法である」
・「労働基準法違反である」
違法性の最終判断は、行政機関や裁判所が行うものです。
内容証明では、事実と請求意思の表明に留めるのが安全です。
6. 注意点②:交渉・支払約束を書かない
・分割払いの提案
・支払期限の交渉
・条件変更の余地
これらは交渉に該当します。
内容証明では「支払いを求める意思」を示すのみとし、具体的な交渉は別の手段に委ねます。
7. 内容証明送付後の想定される流れ
内容証明送付後は、次のような展開が考えられます。
・会社からの回答書面が届く
・弁護士名義で連絡が来る
・無視される
いずれの場合でも次の対応を冷静に選択するための材料が揃う点がメリットです。
8. まとめ|未払い請求は「冷静な第一手」が重要
未払い賃金・残業代の請求は、感情に任せて進めると不利になりやすい分野です。
内容証明は、
・請求意思を整理し
・証拠を確保し
・次の選択肢につなげる
ための冷静な第一手として活用するのが最も効果的です。


