国内取引だけでなく、海外企業との契約でも重要な「準拠法条項」。その意味と設定方法を行政書士がわかりやすく解説します。
1. 準拠法条項とは?
準拠法条項とは、契約に関する解釈・効力・紛争処理などについて、どの国の法律を適用するかを明示する条項のことです。
たとえば、海外企業と取引を行う際、どちらの国の法律を基準に契約を解釈するのかを明記しておかないと、トラブル発生時に大きな混乱を招きます。
日本国内の取引では、通常「日本法に従う」と明記しておくことで、解釈の基準を統一できます。
しかし国際契約では、相手国の法律が自動的に適用される可能性があるため、準拠法条項の設定は極めて重要です。
2. 準拠法条項を設ける目的
準拠法を定める主な目的は、次の3つに整理できます。
- 契約の解釈を明確にするため
契約内容に曖昧さがあっても、「日本法に基づく」と定めておけば、どのように解釈すべきかが明確になります。 - 紛争時の不確実性を排除するため
準拠法を定めていないと、相手方が「自国の法律で解釈すべき」と主張するおそれがあります。
これにより、紛争が長期化・複雑化するリスクがあります。 - 国際取引のリスクを抑えるため
外国法では契約の成立要件や解除条件が異なることがあります。
日本法を準拠法とすれば、自社にとって理解しやすく、予測可能な契約運用が可能になります。
準拠法条項は、契約のルールブックをどの国のものにするかを明確にするための重要な条項です。
3. 条文例と国内契約での設定方法
日本国内の取引では、準拠法条項は比較的シンプルに記載されます。
代表的な条文例は以下のとおりです。
第○条(準拠法)
本契約の成立、効力、履行および解釈に関しては、日本法を準拠法とする。
また、これとセットで「管轄裁判所条項」を記載しておくことが一般的です。
第○条(管轄裁判所)
本契約に関して生じた紛争については、名古屋地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
このように、**「どの法律に基づいて解釈するか」と「どの裁判所で判断するか」**をセットで定めることで、契約の安定性が高まります。
4. 国際契約における注意点
海外企業と契約を結ぶ場合、準拠法条項はさらに慎重に設計する必要があります。
以下のポイントを押さえておきましょう。
(1)相手国法が自動適用されるリスク
準拠法を定めていないと、国際私法の原則により「契約に最も密接な関係を有する国の法」が適用される可能性があります。
つまり、相手国の法制度が自動的に適用される場合があり、思わぬ不利を被ることがあります。
(2)日本法を指定しても無効になるケース
相手国の法制度上、「外国法準拠」を認めていない場合、条項が無効とされることがあります。
また、消費者契約や労働契約など、特定の法律関係では相手国の強行法規が優先されることもあります。
(3)仲裁条項との整合性
国際契約では、裁判所ではなく「仲裁機関(例:日本商事仲裁協会)」を利用するケースがあります。
この場合、準拠法は「仲裁判断の根拠」となるため、条項の整合性を必ず確認しましょう。
(4)契約文言の翻訳精度
日本語と英語など複数言語で契約書を作成する際、どの言語を優先するかを明記する必要があります。
「本契約書は日本語および英語で作成するが、両文の内容が異なる場合は日本語を正文とする。」
これを明記しておかないと、翻訳の解釈を巡って争いになることがあります。
5. まとめ:準拠法の選択でトラブルを防ぐ
準拠法条項は、契約を「どの法律に基づいて運用するか」を明示する重要なルールです。
とくに国際取引では、この一文がトラブルの発生を左右するといっても過言ではありません。
まとめると、以下の3点が実務上のポイントです。
- 国内契約では「日本法を準拠法とする」と明記する
- 国際契約では、相手国法・仲裁条項・言語条項との整合性を確認する
- 管轄裁判所条項とセットで記載し、紛争対応を明確にする
行政書士は、契約の性質や相手国の法制度を踏まえて、最適な準拠法条項を提案します。
どの国のルールで契約を動かすのかを明確にしておくことが、ビジネスの安全を守る第一歩です。


