守秘義務と個人情報保護の違い|秘密保持契約(NDA)の注意点

守秘義務・秘密保持と個人情報保護の違いを行政書士が解説します。秘密情報と個人情報の範囲、NDAと個人情報保護条項を併記する理由、業務委託契約で定めたい事項、契約書作成・確認時の注意点をわかりやすく説明します。

守秘義務と個人情報保護の違い


契約書を確認していると、「秘密保持」や「守秘義務」とは別に、「個人情報の取扱い」という条項が設けられていることがあります。

どちらも情報漏えいを防ぐための規定に見えるため、次のように疑問を感じる方もいるでしょう。

「秘密保持条項があれば、個人情報保護条項は必要ないのか」

「個人情報も秘密情報に含めれば十分ではないのか」

「NDAと個人情報保護条項は何が違うのか」

守秘義務と個人情報保護の大きな違いは、保護する情報の範囲と、義務が生じる根拠にあります。

秘密保持条項は、技術情報、営業情報、顧客情報、取引条件、価格、ノウハウなど、契約上「秘密情報」と定めた情報を保護するための規定です。

一方、個人情報保護は、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど、特定の個人を識別できる情報を適切に取り扱うためのものです。

ただし、両者が完全に分かれているわけではありません。

顧客名簿や従業員情報などは、個人情報であると同時に、契約上の秘密情報にも該当することがあります。

したがって、契約書を作成するときは、両者を機械的に分けるのではなく、取り扱う情報と取引内容に合わせて適用関係を整理することが重要です。

守秘義務・秘密保持義務・NDAの関係


守秘義務とは、業務や取引の過程で知った秘密を、正当な理由なく第三者へ開示したり、本来の目的以外に利用したりしない義務をいいます。

契約書では、「秘密保持義務」「機密保持義務」などと表現されることもありますが、実務上は同じような趣旨で使用されています。

秘密保持契約は、英語のNon-Disclosure Agreementを略して「NDA」と呼ばれます。

取引を開始する前に秘密保持契約だけを独立して締結する場合もあれば、業務委託契約書、共同開発契約書、売買契約書などの中に秘密保持条項を設ける場合もあります。

NDAは法人同士だけで締結するものではありません。

会社と個人事業主、発注者とフリーランス、会社と従業員など、業務上の秘密情報を共有する関係であれば利用されることがあります。

重要なのは、契約書の名称ではなく、どの情報を秘密として扱い、誰が、何の目的で、どのように利用できるのかが明確になっていることです。

形式的に秘密保持条項が入っていても、秘密情報の範囲や利用条件が曖昧であれば、実際の取引に十分対応できない可能性があります。

秘密保持契約で保護する秘密情報とは


秘密保持契約では、最初に「秘密情報」の範囲を定めます。

秘密情報として扱われるものには、次のような情報があります。

  • 商品やサービスに関する技術情報
  • 製造方法、設計図、仕様書、プログラム
  • 営業方法、販売計画、価格設定
  • 取引先、顧客、仕入先に関する情報
  • 契約条件、見積金額、報酬額
  • 事業計画、財務情報、社内資料
  • 打ち合わせや交渉の内容

ただし、すべての情報を無条件に秘密情報とすると、受領した側が何を秘密として管理すべきか分からなくなることがあります。

そのため、書面やデータに「秘密」「Confidential」などと表示された情報だけを対象とする方法や、開示時に秘密であることを伝えた情報を対象とする方法があります。

一方で、秘密表示がないことだけを理由に重要な情報が保護対象から外れてしまうと、開示側にとって不都合です。

そこで、情報の性質や開示された状況から、合理的に秘密であると判断できる情報も対象に含めることがあります。

また、公知の情報、受領前から保有していた情報、正当な権限を持つ第三者から取得した情報、秘密情報を利用せず独自に開発した情報などは、秘密情報から除外するのが一般的です。

秘密情報の定義は、広ければよいわけでも、狭ければよいわけでもありません。

実際に共有する情報と、双方が管理できる範囲を踏まえて設計することが重要です。

個人情報保護条項で取り扱う情報とは


個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述によって特定の個人を識別できるものなどをいいます。

氏名や住所だけでなく、電話番号、メールアドレス、顔写真、顧客番号なども、ほかの情報と容易に照合して個人を識別できる場合には、個人情報に該当する可能性があります。

また、「個人情報」と「個人データ」は同じ意味ではありません。

個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報を指します。

業務委託によって顧客名簿、会員情報、従業員情報などを受託者へ提供する場合には、単に外部へ漏らさないことだけでなく、情報を安全に管理するためのルールが必要になります。

契約書では、次のような事項を定めることがあります。

  • 個人情報を利用できる目的
  • 契約業務以外での利用禁止
  • 安全管理措置
  • 個人情報を取り扱える担当者の範囲
  • 複製や持ち出しの制限
  • 再委託を行う場合の条件
  • 漏えい等が発生した場合の報告
  • 契約終了後の返還または削除

個人情報保護条項も、契約当事者間の取り決めとして契約書に定める条項です。

ただし、個人情報を取り扱う事業者には、契約の有無とは別に個人情報保護法上の義務が適用される場合があります。

そのため、秘密保持条項と同じ文章をそのまま流用するのではなく、実際の取扱方法を踏まえて個人情報保護条項を設計する必要があります。

秘密情報と個人情報が重複する場合


秘密情報と個人情報は、どちらか一方にしか該当しないものではありません。

たとえば、企業が保有している顧客名簿には、顧客の氏名、住所、電話番号、購入履歴などが記載されています。

これらは個人情報に該当する可能性があると同時に、企業にとって外部へ公開していない重要な営業情報でもあります。

そのため、契約上の秘密情報にも含まれることがあります。

反対に、製品の設計図、製造方法、価格設定、事業計画などは秘密情報になり得ますが、特定の個人に関する情報でなければ個人情報には該当しません。

また、一般に公開されている情報であっても、個人情報保護法上の個人情報に該当する場合があります。

したがって、「秘密情報ではないから個人情報として管理しなくてよい」とは限りません。

両者が重複する場合は、秘密保持条項と個人情報保護条項のどちらを適用するのかを整理します。

たとえば、個人情報については個人情報保護条項を優先して適用し、それ以外の秘密情報については秘密保持条項を適用する方法があります。

重複そのものが問題なのではありません。

同じ情報に異なる条項が適用されたときに、利用目的、管理方法、返還・削除方法、義務の存続期間などが矛盾しないようにすることが大切です。

NDAと個人情報保護条項を併記する理由


秘密保持契約を締結している場合でも、個人情報を取り扱う取引では、個人情報保護に関する規定を別に設けた方がよい場合があります。

秘密保持条項では、主に第三者への開示禁止や目的外利用の禁止を定めます。

しかし、個人情報を安全に取り扱うためには、それだけでは十分でないことがあります。

たとえば、業務委託先に顧客情報を渡す場合には、誰が情報へアクセスするのか、データをどこに保存するのか、再委託を認めるのか、漏えい等が発生したときにどのように報告するのかまで決めておく必要があります。

契約終了後にデータを返還するのか、完全に削除するのかも重要です。

秘密保持条項の中にこれらをすべて盛り込むことも可能ですが、条項が長くなり、秘密情報一般の取扱いと個人情報特有の管理事項が分かりにくくなることがあります。

そのため、秘密保持条項では秘密情報全般の取扱いを定め、個人情報保護条項では個人情報に関する具体的な管理方法を定めるという整理が考えられます。

特に、顧客管理、システム開発、ウェブサイト運営、営業代行、採用支援、コールセンターなど、業務上多くの個人データを取り扱う契約では、両方の条項を設ける意味が大きくなります。

契約書に定めておきたい具体的な事項


秘密保持条項や個人情報保護条項を設ける場合は、「情報を漏らしてはならない」とだけ書くのではなく、実際の取引に合わせて内容を具体化する必要があります。

まず確認したいのが、保護する情報の範囲です。

秘密情報の定義が曖昧だと、開示した側と受領した側で、秘密として扱うべき情報の認識が食い違う可能性があります。

次に、情報を利用できる目的を定めます。

受領した情報は、契約業務を行うために必要な範囲でのみ利用し、他の営業活動や自社サービスの開発などに利用しないことを明確にします。

情報を共有できる相手の範囲も重要です。

役員や従業員、業務委託先、専門家など、業務上必要な相手に開示できるのか、事前承諾を必要とするのかを整理します。

再委託が予定されている場合には、再委託の可否や条件、再委託先に負わせる義務も定めます。

さらに、漏えい、紛失、不正アクセスなどが発生した場合の報告方法や、原因調査への協力についても決めておくと安心です。

契約終了時の処理については、資料やデータを返還するのか、削除・廃棄するのか、削除したことを報告させるのかを定めます。

守秘義務の存続期間も、情報の性質に応じて検討します。

一律に3年や5年と決めるのではなく、情報が事業上の価値を保つ期間や、契約終了後も保護する必要性を踏まえて設定することが大切です。

秘密保持・個人情報保護条項でよくある問題


秘密保持条項や個人情報保護条項が契約書に入っていても、実際の取引に合っていなければ十分に機能しない可能性があります。

よくあるのが、インターネット上のひな形をそのまま使用しているケースです。

ひな形では、秘密情報の範囲、開示方法、契約期間、利用目的などが、自社の取引と合っていないことがあります。

秘密情報を広く定めすぎると、受領側が守るべき範囲を判断できません。

反対に、「秘密と表示された書面」に限定しすぎると、メール、口頭説明、画面上で共有した情報などが保護対象から外れる可能性があります。

個人情報保護条項についても、「法令を遵守する」とだけ書かれており、管理方法、再委託、事故発生時の報告、契約終了後の削除などが定められていない場合があります。

また、秘密保持条項と個人情報保護条項で、返還・削除の時期や義務の存続期間が異なり、どちらに従えばよいのか分からない契約書もあります。

相手方から提示された契約書の場合は、自社だけに厳しい義務が課されていないかも確認が必要です。

秘密保持義務が一方にしか課されていない、損害賠償の範囲に上限がない、相手方だけが自由に情報を利用できるといった内容になっていることもあります。

契約書は、条項が入っているかどうかだけでなく、取引内容に合っているか、双方の義務が適切に整理されているかまで確認することが重要です。

契約書作成・内容確認を行政書士に依頼する場合


守秘義務と個人情報保護の違いが分かっても、「自社の契約書にどう書けばよいか」は、実際の取引によって変わります。

たとえば、取引開始前にNDAを結びたい場合と、委託先へ顧客情報を渡して業務を任せる場合では、確認したい内容が異なります。秘密情報の範囲だけでなく、情報を使える目的、再委託、漏えい時の連絡、契約終了後の返還・削除などを、取引の流れに沿って整理することが大切です。

すでに相手方からNDAや業務委託契約書を渡されている場合は、自社が実際に守れる内容か、秘密保持条項と個人情報の取扱条項に食い違いがないかを、締結前に確認できます。

弊所では、NDA・業務委託契約書の新規作成と、相手方案・ひな形の内容確認に対応しています。取引の概要と、誰がどのような情報を扱う予定かを伺い、必要な条項や修正候補を整理します。

「NDAだけで足りるか分からない」「相手から届いた契約書を確認してほしい」という段階でもご相談いただけます。契約書案があればお送りください。まだ文案がない場合は、取引内容を分かる範囲でお知らせいただければ、対応内容と費用を事前にご案内します。

契約書の作成・内容確認のサービス内容はこちらをご覧ください。

まとめ


守秘義務と個人情報保護は、対象となる情報と義務の根拠が異なります。顧客名簿のように両方に関わる情報もあるため、NDAと個人情報の取扱条項は、実際に共有する情報や業務内容に合わせて確認することが大切です。

契約書では、秘密情報の範囲に加え、利用目的、再委託、漏えい時の連絡、契約終了後の返還・削除などを整理します。相手方から提示された文案を使う場合も、自社の取引と運用に合っているかを締結前に確認しましょう。

弊所では、NDAや業務委託契約書の作成、既存文案の内容確認・修正候補の整理に対応しています。文案がある方も、これから作る方も、取引の概要からご相談いただけます。

坂下慶門
執筆・ご相談対応 坂下 慶門 特定行政書士
プロフィール

契約書作成・内容確認|全国対応

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業務委託・売買・NDAなどの作成から、相手方案やひな形の内容確認まで対応します。

新規作成 16,500円~(税込)
内容確認・レビュー 11,000円~(税込)

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