秘密保持契約(NDA)と個人情報保護条項の違いを正しく理解していますか?行政書士が両者の関係と実務上の注意点をわかりやすく解説します。
1. 秘密保持と個人情報保護はどう違う?
契約書には「秘密保持条項」と「個人情報保護条項」がセットで登場することが多いですが、
両者の目的は似ているようで実は異なります。
- 秘密保持条項:企業秘密・ノウハウ・取引情報など、「ビジネス上の非公開情報」を守るための規定
- 個人情報保護条項:氏名・住所・メールアドレスなど、「個人を特定できる情報」を保護するための規定
つまり、秘密保持は企業情報中心、個人情報保護は個人データ中心という違いがあります。
この区別を曖昧にしたまま契約書を作成すると、情報漏えいが起きたときに「どの条項が適用されるか」が不明確になり、トラブルの原因になります。
2. 秘密保持条項(NDA)の目的と内容
秘密保持条項の目的は、取引の過程で知り得た非公開情報を第三者に漏らさないことです。
企業間取引、業務委託、共同開発などで、事業上のノウハウや営業情報を共有する際に用いられます。
主な内容は次のとおりです。
- 秘密情報の定義
何を「秘密」とするのかを明確にします(技術情報、営業情報、契約条件など)。 - 情報の取り扱い方法
第三者への開示禁止、複製制限、漏えい防止策などを定めます。 - 守秘義務期間
契約終了後も一定期間(3〜5年など)継続するのが一般的です。 - 違反時の対応
違反があった場合の損害賠償や契約解除の条件を定めます。
秘密保持契約(NDA)は「法人間の信頼」を守るためのものであり、取引上の機密を保護することが主眼です。
3. 個人情報保護条項の目的と内容
一方で、個人情報保護条項の目的は、法令(個人情報保護法)に基づいて、個人データを安全に管理することにあります。
企業が顧客情報や従業員データを取り扱う際には、法令遵守が前提となります。
個人情報保護条項に盛り込むべき内容は次のとおりです。
- 個人情報の定義と取扱目的
「個人情報」とは何かを定義し、収集・利用目的を明確にします。
> 「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であり、氏名・住所・電話番号その他により特定の個人を識別できるものをいう。 - 第三者提供の制限
本人の同意なく第三者へ提供しないことを明記します。 - 安全管理措置
アクセス制限や暗号化など、情報漏えい防止のための措置を記載します。 - 委託先管理
個人情報を外部委託する場合、委託先にも同等の管理を求める義務を設けます。 - 違反時の対応
法令違反があった場合の報告義務や再発防止策を明確にします。
秘密保持条項が「契約上の取り決め」であるのに対し、個人情報保護条項は「法令遵守」を前提にした義務規定である点が異なります。
4. 両者を併記する際の実務上の注意点
秘密保持条項と個人情報保護条項を同一契約に盛り込む際には、以下のポイントに注意しましょう。
- 情報の範囲を重複させない
個人情報も広い意味では「秘密情報」に含まれますが、同じ内容を重ねて記載すると混乱を招きます。
→「ただし、個人情報については第○条(個人情報保護)に従う」と整理すると分かりやすくなります。 - 適用法令の明示
個人情報保護条項では「個人情報保護法に基づき」と明記するのが適切です。
秘密保持条項には、法令ではなく契約上の義務として位置付けるのが原則です。 - 委託契約では両方の義務を負わせる
たとえば業務委託契約書では、「業務上知り得た秘密情報」も「個人情報」も扱う可能性があります。
この場合は、双方の条項を入れ、相互にリンクさせておくことが望ましいです。 - 違反時のペナルティを整理する
個人情報漏えいは法的責任(行政指導や罰則)につながるため、損害賠償とは別に報告義務を明記しておくことが重要です。
このように両者をバランス良く設計することで、契約全体の信頼性が高まります。
5. まとめ:情報の種類に応じて適切な条項を設計
秘密保持条項と個人情報保護条項は、目的も根拠法も異なります。
まとめると次のようになります。
| 項目 | 秘密保持条項 | 個人情報保護条項 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 企業秘密・取引情報 | 氏名・住所などの個人データ |
| 根拠 | 契約上の取り決め | 個人情報保護法 |
| 目的 | 事業上の機密を守る | 個人のプライバシーを守る |
| 違反時の対応 | 損害賠償・契約解除 | 行政指導・報告義務+損害賠償 |
行政書士は、契約内容・業種・取扱データの性質に応じて、
どの条項をどの範囲で入れるべきかを判断します。
情報漏えいのリスクが高まる現代において、
「秘密保持」と「個人情報保護」をセットで整理することが、安全な契約運用の第一歩です。


