「従業員が少ないうちから就業規則は作るべきか」
「作らないと何か問題があるのではないか」
小規模事業者ほど、この点で不安を感じやすい傾向があります。
しかし結論から言えば、多くの小規模事業者にとって、就業規則は“必須”ではありません。
本記事では行政書士の視点から、
小規模事業者に就業規則が不要なケース・注意すべき落とし穴・現実的な代替策を整理して解説します。
1.就業規則は原則として義務ではない
就業規則は、
すべての会社に作成義務があるわけではありません。
労働基準法上、
就業規則の作成・届出が義務付けられるのは、
「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に限られます。
つまり、
小規模事業者の多くは、
法的には就業規則を作らなくても問題ありません。
2.「常時10人以上」の正しい考え方
「10人以上」という基準は、
意外と誤解されやすいポイントです。
■ 注意点
・一時的に10人を超えただけでは該当しない
・パート・アルバイトも条件次第で含まれる
・事業場単位で判断される
ここを正確に把握しないまま、
「念のため作ろう」と進めてしまうケースが少なくありません。
3.小規模事業者が抱えがちな誤解
小規模事業者からよく聞く誤解には、次のようなものがあります。
■ よくある誤解
・就業規則がないと違法になる
・取引先に提出を求められる
・助成金のために必須
・トラブル防止には就業規則しかない
実際には、
就業規則でなければ対応できない場面は限定的です。
4.就業規則がなくて困る場面とは?
一方で、
就業規則があった方がよい場面も存在します。
■ 例
・解雇・懲戒などの重大判断
・賃金・勤務条件を詳細に定めたい
・人員増加が確実に見込まれる
ただし、
これらはある程度組織化が進んだ段階での話です。
創業期や少人数体制では、
現実的にそこまでの運用ができないことも多いでしょう。
5.無理に作ることで生じるリスク
義務がない段階で就業規則を作ると、
次のようなリスクが生じやすくなります。
■ 主なリスク
・実態に合わないルールが固定化される
・守れていない規定が増える
・従業員から指摘される材料になる
・将来の紛争で不利に使われる
就業規則は、
「存在している」だけで法的評価の対象になります。
6.小規模事業者に適した現実的対応
小規模事業者にとって重要なのは、
最初から完璧な制度を作ることではありません。
まずは、
・業務の進め方
・責任範囲
・情報の扱い
など、実務で揉めやすい部分を整理することが先決です。
7.社内ルール文書で代替できる範囲
就業規則を作らなくても、
次のような文書で十分に対応できるケースがあります。
■ 代替文書の例
・業務ルール整理文書
・対応フロー一覧
・情報管理ルール
・外注・委託向けガイド
これらは労務管理に踏み込まず、
実務の安定と説明責任を確保できます。
8.まとめ|段階に応じた整備が重要
小規模事業者にとって、
就業規則は「最初に作るもの」ではありません。
・規模
・人員構成
・運営スタイル
これらに応じて、
必要な文書を段階的に整備することが重要です。
無理に就業規則を作るより、
今の実態に合った社内ルール文書から始める方が、
結果的に経営を安定させます。


