社内ルールは、存在していても文書化されていなければ「なかったもの」と同じ扱いを受ける場面があります。
特に少人数の会社や創業間もない事業者では、暗黙の了解や口頭指示で運用しているケースが多く、トラブル発生時に大きな経営リスクとなりがちです。
本記事では行政書士の視点から、社内ルールを文書化せずに放置した場合に生じる具体的リスクと、最低限押さえておくべき考え方を解説します。
1.社内ルールを文書化しない状態とは?
社内ルールを文書化していない会社では、
・社長や担当者の頭の中にだけルールがある
・その都度、口頭やチャットで指示している
・ルールの内容が固定されていない
といった運用になりがちです。
一見すると柔軟で効率的に見えますが、
この状態は、「ルールが存在しない」のとほぼ同義になります。
なぜなら、
後から第三者に説明できる「客観的な証拠」が何も残らないからです。
2.リスク①:判断基準が人によって変わる
文書化されていない社内ルールは、
解釈が担当者・時期・気分によって簡単に変わります。
■よくある例
・以前はOKだった対応が、ある日突然NGになる
・Aさんには許可したが、Bさんには認めない
・「前に言った」「聞いていない」の水掛け論
これらはすべて、
判断基準が明文化されていないことが原因です。
特に複数人で業務を回している場合、
属人化が進み、業務品質も不安定になります。
3.リスク②:トラブル時に会社を守れない
社内トラブルや対外的な紛争が起きた場合、
「社内ではこういうルールだった」という主張は、
文書がなければほぼ通りません。
■文書がないことで不利になる場面
・業務範囲や責任の所在
・情報の取り扱い方法
・禁止事項の有無
・対応手順の妥当性
相手から見れば、
「そのルール、本当に存在していましたか?」
で終わってしまいます。
社内ルールの文書化は、
従業員を縛るためではなく、会社を守るためのものです。
4.リスク③:外注・業務委託との認識ズレ
外注先やフリーランスと仕事をする場合、
口頭や簡単なメッセージだけで進めると、
認識のズレが生じやすくなります。
■典型的なトラブル
・どこまでが業務範囲なのか不明確
・情報を持ち出してよいかの認識違い
・作業ルール・報告ルールの不統一
「言わなくても分かるだろう」は、
社外には一切通用しません。
業務委託こそ、
社内ルールを文書で共有する意義が大きい領域です。
5.リスク④:従業員・取引先への説明不能
社内ルールが文書化されていないと、
問い合わせや指摘に対して説明ができません。
・なぜそれは禁止なのか
・なぜこの手順が必要なのか
・なぜ今回は対応できないのか
明文化されたルールがあれば、
「社内ルールとしてこう定めています」と説明できます。
文書がない場合、
すべてが個人判断に見えてしまい、
会社としての信用を損なう可能性があります。
6.「口頭ルール」が通用する限界
小規模事業者では、
「うちは少人数だから大丈夫」と考えがちです。
しかし、以下のタイミングが来た時点で限界を迎えます。
・人が1人でも増えたとき
・外注を使い始めたとき
・取引量が増えたとき
・トラブルが起きたとき
トラブルが起きてから作るルールは、ほぼ必ず遅いです。
7.最低限、文書化すべき社内ルールの考え方
すべてを細かく決める必要はありません。
重要なのは「揉めやすい部分」から整理することです。
■最低限検討すべき領域
・業務範囲・役割分担
・情報管理・持ち出し禁止
・対応フロー(例外時を含む)
・外注・業務委託時の基本ルール
完璧な規程ではなく、
「判断軸を共有する文書」で十分です。
8.まとめ|文書化は「管理」ではなく「防衛」
社内ルールを文書化しないまま放置すると、
・判断が属人化する
・トラブル時に会社を守れない
・外注や取引先と揉めやすい
・説明責任を果たせない
といった、経営上の静かなリスクが蓄積します。
社内ルール文書は、
従業員を縛るためのものではなく、
会社を守り、判断を安定させるための防衛装置です。
早い段階で、無理のない形から整えておくことが重要です。

