2026年1月施行の行政書士法改正について、改正の背景、主な変更点(使命・職責・特定行政書士の権限拡大・業務制限強化・両罰規定)をわかりやすく解説。行政書士の今後の実務への影響をまとめています。
目次
はじめに
2025年6月に国会で成立した「行政書士法の一部を改正する法律」が、2026年1月1日より施行されます。今回の改正は、単なる文言整理ではなく、行政書士の立ち位置や役割を大きく変えるものです。
デジタル社会の進展や無資格業者の横行に対応する形で、使命の明確化、職責規定の新設、特定行政書士の権限拡大、業務制限規定の強化など、実務に直結する改正が盛り込まれています。
本記事では、改正の背景、主な改正点、そして実務への影響をわかりやすく整理してご紹介します。
改正の背景
行政手続のオンライン化が急速に進む中、無資格者による補助金申請代行や「顧問料」「寄付金」といった名目で実質的に報酬を得るケースが問題となってきました。これらは依頼者のトラブルに直結し、行政書士制度の信頼を揺るがす要因となっていました。
こうした状況を踏まえ、制度の信頼性と実効性を高めるために今回の改正が行われたのです。
主な改正点
1. 行政書士の使命の明文化
従来「目的」とされていた条文が「使命」へと変更されました。
「行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、国民の利便に資し、権利利益の実現に資すること」が行政書士の使命として明文化されます。
これは、行政書士が社会的に果たすべき役割をより重く位置付けるものです。
2. 職責規定とデジタル社会への対応
新たに「職責」が設けられ、以下の義務が定められました。
- 品位を保持し、公正かつ誠実に業務を遂行する義務
- 法令や実務に精通するよう研鑽を続ける義務
- 情報通信技術を活用し、デジタル社会に適応する努力義務
この規定により、電子申請やクラウドシステムの導入など、ITを活用した業務改善が制度的にも求められることになります。
3. 特定行政書士の業務範囲拡大
これまで不服申立代理は「行政書士が作成した書類」に限られていました。改正により、「行政書士が作成できる書類」に関わるもの全般が対象となります。
たとえば本人申請や他者が作成した申請に対する不服申立ても扱えるようになり、特定行政書士の役割が大きく広がります。これは依頼者様にとっても選択肢が増える改正といえます。
4. 業務制限規定の強化
無資格業者の関与を防ぐため、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。
「会費」「寄付」「協力金」などの名目であっても、実質的に報酬を受け取って業務を行えば違法となります。
これにより、依頼者保護と業務の適正化が進むことが期待されます。
5. 両罰規定の導入
今回の改正では、法人組織に対する責任追及を明確化するため、両罰規定が整備されました。
これにより、違反行為を行った個人だけでなく、法人(行政書士法人や無資格法人)も処罰の対象となります。
具体的には次の2つの場面で適用されます。
- 行政書士法人の内部管理違反
・帳簿の備付・保存義務違反
・立入検査の拒否や虚偽報告
→ 個人の行政書士だけでなく、法人としての行政書士法人も罰則対象となります。 - 無資格業務や名称使用違反
・行政書士でない法人が、名目を問わず報酬を得て業務を行った場合
・行政書士でないのに名称を使用した場合
→ 違反行為を行った従業員個人だけでなく、法人自体も処罰されます。
この改正により、「法人ぐるみの違反」を防止し、制度の実効性を担保する仕組みが整ったといえます。
実務への影響
今回の改正は実務に大きな影響を与えます。
- 補助金申請業務
無資格業者の排除が進むことで、正規の行政書士が担うべき領域が明確化されます。 - 不服申立代理業務
特定行政書士の活動範囲が拡大し、新しい依頼案件が生まれる可能性があります。 - 法人運営
帳簿の保存義務や立入検査対応など、法人内部の管理体制を強化する必要が出てきます。
依頼者様にとっても「安心して依頼できる環境」が整う点でメリットがあります。
これからの行政書士に求められるもの
改正後は、単に書類を作成するだけではなく、デジタル化や法令順守への対応力も不可欠になります。
また、特定行政書士資格を持つことで、より高度な案件に対応できるチャンスも広がります。
一方で、名目を問わず報酬を得て業務を行うことへの規制が強化されたため、契約書や報酬体系を見直す必要もあります。
行政書士自身が「専門性・誠実性・IT対応力」を兼ね備えた存在になることが、今後の鍵となるでしょう。
まとめ
2026年施行の行政書士法改正は、行政書士制度の信頼性を高めると同時に、業務領域を広げるものです。
使命の明文化や特定行政書士の権限拡大は、行政書士にとって大きな追い風となりますが、同時にコンプライアンスや内部管理の重要性も増しています。
依頼者様にとっては「安心して専門家に相談できる環境」が整備される改正といえるでしょう。
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